【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2024年度診療報酬改定において機能評価係数IIが6項目から4項目となり、「救急医療係数」は位置付けが変更され、「救急補正係数」として評価されることになった。機能評価係数IIの4項目についてはそれぞれ医療機関群ごとに評価されるのに対して、救急補正係数は全てのDPC対象病院に共通する項目である。救急医療の提供は全ての急性期病院に共通する重要課題という意味合いが含まれているのかもしれない。コロナ後に病床稼働率が戻らない病院が多い中、救急医療に注力するケースは多いであろうから、救急補正係数でどのような評価を受けるかは気になるところだろう。本稿では、名称と位置付けが変更された救急係数について、改めて地域差の実態を踏まえ当該係数をどう考えるかについて私見を交えて言及する。
グラフ1は、20年度の救急医療係数と緊急入院患者に占める救急医療入院の割合を都道府県別に集計したものであり、両者には有意な正の相関がみられる。 (残り1647字 / 全2799字) 次回配信は5月27日5:00を予定しています
このグラフには全てのDPC対象病院が含まれており、地域全体の救急医療の実態を1つの側面から明らかにしたものである。横軸の救急医療入院割合は重篤な救急患者の救急医療管理加算の算定率を示している。当該係数は救急医療管理加算やICU等の特定入院料を算定する患者について、入院から2日目までの診断群分類点数表と出来高換算点数の差額を補填したものである。重篤な救急患者は医療資源の投入量が多く、持ち出しになるので、その分を評価しようという趣旨であり、そのためには救急医療管理加算が1つのフィルターになっている。さらに、救急医療管理加算2については2分の1の評価であるので、救急医療管理加算1の算定率が高い地域ほど高い評価となっている。
グラフ2が24年度の救急補正係数を縦軸に取り、横軸を22年度の緊急入院患者に占める救急医療入院の割合に置き換えたものである。
診療実績と係数の評価期間にはタイムラグがあり、24年度の係数は22年10月から23年9月のデータが反映されるので、縦横が完全に対応しているわけではない。
グラフ1とグラフ2を比べると名称こそ変更されたが、地域差が存在することに加え、各都道府県の位置は大きく変わっていないことが分かる。ただし、沖縄県などは20年度の救急医療係数よりも24年度の救急補正係数が大きく変わっているが、横軸の変化によるところが大きく、救急医療管理加算の算定率が影響しているのだろう。
秋田県や愛知、三重、岐阜のようにラインよりも上にくる病院もあれば、奈良県のような外れ値も存在する。これは、救急医療管理加算1・2の割合によるところも大きく、保険審査の事情も密接に関係する=グラフ3=。
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