
■1日2,000件を自動取り次ぎ
病院にかかってくる電話の処理というのは、意外と時間や手間がかかる。代表電話をとり、患者が希望する診療科につなぐ。そして各診療科につながると、そこの職員が対応する。しかし、かかってくる量が膨大だと、そもそも代表電話につながらないことが多いほか、回線がつながっても職員の数が足りず、病院側がとれないことがある。代表電話につながった後に対応する診療科の職員は、目の前の患者に応対していて電話で話すこともままならないことも。問い合わせ内容によっては担当医に判断を仰ぐ必要がある。そうなると、最初の電話のタイミングで返事ができず、患者にとっても職員にとっても負担となる。
そういった問題を解決するため、Dr.JOY(東京都港区)が考えたのが「AI電話サービス」だ。まずAIが自動音声で質問することで患者からの電話内容を聞き取り、予約内容といった重要情報を抽出する。その内容は文字起こしで表示される上、内容と抽出データの一元管理によって、見落としや重複対応を防止する。業務の透明性と効率性を向上させ、患者対応を一貫で行える。
さらにこの「AI電話サービス」は、最大100回線まで同時対応ができ、患者からの電話に対して迅速かつ確実に対応する。職員による電話のとりこぼしの防止となる。
こういった特徴によって、導入病院はスタッフの業務負担軽減と離職リスクの低減につなげる。経営の効率化で、業務全体の最適化とコスト削減も実行。待たされずに対応を受けられることで患者満足度も向上していくという。
2024年10月1日から導入した社会医療法人仁愛会浦添総合病院(沖縄県浦添市)では、診察予約、予約変更・キャンセルなどで1日平均50-100件の電話も。電話対応における「つながらない」という課題が長年の悩みだったという。地域のクリニックからの紹介患者が他病院に流れるという機会損失や、電話予約業務の複雑さによる新人スタッフの育成負担が、業務効率や患者満足度の向上を阻んでいた。
これらの課題を解決するために、Dr.JOYの医療特化型「AI電話サービス」を導入した。AIの24時間対応により、電話応答率100%を達成。クリニックからの紹介患者の流出も防ぎ、地域医療ネットワークの強化に寄与。また、AIが予約業務を一部代替したことで、新人スタッフの早期戦力化が進み、AI対応と折り返し対応を組み合わせ、突発的な人員不足時も業務が円滑に進む環境を実現した。
他業務に集中し、効率化できたことに加え、クレーム件数が激減し、録音機能によるハラスメント防止も強化されたことで、スタッフの心理的負担も軽減された。さらには、電話音が減少し、スタッフ間の会話やコミュニケーションが増加することにより、チーム全体に連携の一体感が増す効果もあった。
以前は予約のためだけに来院する患者もいたが、今はゼロに。電話応答率の向上により、診察予約や変更がスムーズに行えることで、患者側の満足度向上にもつながったという。現場スタッフから「電話がつながる安心感で信頼性も増し、病院全体の運営効率が飛躍的に向上した」との声も上がっている。
■病院ヒアリングで対話シナリオ
他社との差別化として、顧客に応じたカスタマイズと医療に特化したサポート体制が挙げられる。現場ヒアリングを実施し、対話シナリオの作成に生かす。導入時の担当コンサルタントが、導入後も継続してサポートを実施する。経緯をよく知る担当者が的確な対応を行い、新しい課題にも対応して、導入後も改善を続けていくという。改善のために必要な入電データの定期分析によって、課題や改善ポイントを特定し、提案や対話シナリオの追加・最適化や、新機能の導入を検討・実施する。予期せぬ問題の迅速な解決に向け、専用のサポート窓口を設置。潜在的な課題の事前把握と、問題を未然に防ぐ取り組みも行う。
導入後の混乱防止には、患者へのスムーズな周知も重要になるという。周知用の資料として、ポスターや配布カード、ウェブバナーを専属のデザイナーが制作する。資料の具体的な活用策のアドバイスも行う。
導入前の丁寧なヒアリングなどの調査によるシナリオ設計、患者への周知サポート、さらには導入後も同じ担当者による改善に向けたサポートを行う。こういった取り組みが奏功し、24年11月末時点で25施設に導入されている。Dr.JOYによると、導入先からは効率化による業務負担の軽減のみならず、「『必ず電話がつながる病院』と患者に評価され、信頼度が増した」という報告もあったという。
電話というコミュニケーションツールは、対話が基本で、病院はマンパワーを割かざるを得ないものだった。一方でウェブなど最新ITツールを使いこなせない人にとっての生命線でもある。「AI電話サービス」がもたらす、応答の無人化とデータ管理の容易さ、さらにはつながりやすさは、病院と患者にとってWin-Winの関係を構築するものと言える。
Dr.JOYは今後も、「AI電話サービス」を地域医療ネットワーク全体に展開し、患者体験の向上と医療機関の効率化をさらに推進。医療の未来に「次の一手」を提供し続けるとしている。
▽Dr.JOY株式会社「AI電話サービス」
https://service.drjoy.jp/feature/aicall
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