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電子カルテデータを主軸に病院の経営改善を実現
株式会社エスパイオン・メディカルテクノロジー「HAMIS」

2025年01月31日 12:00

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■自院のシステム開発から起業

 エスパイオン・メディカルテクノロジー(千葉県銚子市)が提供するのは、「HAMIS(ハミス)」と呼ばれる病院向けのIT・DXソリューションシステム。電子カルテ、各部門の診療支援システムと、「ヒト・モノ・カネ・情報」を集約し、効率よく活用する企業資源計画(ERP)の発想を病院経営に取り入れた病院高度経営情報システムだ。

 システムの大きな特徴の1つは韓国の一般的な電子カルテを基に開発されたことだ。日本では電子カルテは現場の使いやすさを重視しており、選択した電子カルテにオーダリングシステムなどをつなぐ。一方、韓国においては電子カルテに蓄積されたデータを、経営管理に活用するという明確な目的があるという。基本的には1つのベンダーが病院業務の全システムの設計や開発だけでなく、分析も行う。

 バラバラだった各システムをつないだ従来の病院システムでは、▽手入力管理など業務負担が多い▽必要なデータを必要な時に取り出しにくい▽異なるシステムの接続で維持にも費用がかさみがちになる-などの課題があった。一体的に病院全体のシステムを構築することによって、「HAMIS」では▽収益増大▽経営リスク管理▽高いコストパフォーマンス-の3つの目標を掲げている。
 
 収益増大には、売り上げの増大と経費の節減が必要となる。売り上げを増やすには、システム導入によって業務を効率化し、生産性を向上させる。そして、患者への対応時間を増やし、ニーズを吸い上げ、患者中心の業務プロセスに改善することで、収入向上につなげる。

 経費の節減には、内訳の把握と管理、材料費やレセプト関連業務などでの損失防止が必要となる。病院は人件費と材料費が全体費用の70-80%を占めている。適正な人員管理や適正材料使用料の管理を「HAMIS」で行っていく。レセプト返戻や診療報酬の減点の防止にも役立てる。

 経営リスク管理については原価計算を含め、正確なデータを迅速に提供。損益計算やキャッシュフローの有機的管理で、財務構造改善を進めていく。また、病院は労働集約型の産業なだけに、経営改善には職員の意識改革が重要となる。そこで、「HAMIS」の職員向けの指標においては、達成率が見える形で提供される。具体的には前年の実績と過去3年間の平均実績に基づき目標値を設定する。それと実績を比較することで目標達成率を見やすくし、考察や改善を促す。

 導入に当たっては、給与計算と経理を除いた病院の全業務の現況をエスパイオン社の担当者がヒアリング。PI(プロセス・イノベーション)を推進し、カスタマイズを行う。時間の経過によって業務も変化していくため、保守期間中の持続的なアップグレードを実施し、交換周期の縛りをなくしているという。「HAMIS」導入後も保守対応の一環として、月10日間の改修作業を行う。「HAMIS」の保守範囲は、プログラムの機能向上や保全対応、診療報酬改定に伴う対応、誤操作やハード障害時の復旧支援、業務変更・拡張に伴うハード・ソフトに関する相談対応と幅広い。

 この「HAMIS」開発のきっかけは、医療法人積仁会島田総合病院(千葉県銚子市)のシステム導入だった。2000年代の初頭に、IT化のために電子カルテ導入の検討を始めた。嶋田一成院長(当時は医局長)を中心に導入委員会を結成。複数の国内ベンダーから話を聞いたが、理想に近いものはなかった。特にどのベンダーのシステムも数年で全体の入れ替えが必要で、電子カルテから経営判断に必要なデータが見られなかったという。


 検討は海外のシステムメーカーにも及び、「業務効率化、データ収集・活用し、経営を支援する」というポリシーを掲げる韓国メーカーを選んだ。05年に日韓両国の企業と共にシステム開発を開始。第一段階で約10年間を要した。途中、12年に「HAMIS」の開発のため、エスパイオン・メディカルテクノロジーを設立。嶋田院長が社長に就任した。

■地域連携システムも

 第2段階は14-16年に「HAMIS」の一次開発として、カルテ、オーダリング、看護、各診療支援部門を開発。さらに18-20年にはERP、経営情報システム(MIS)、原価計算についても開発を行った。現在は人事評価やオンライン健診結果説明システムも取り扱っている。エスパイオン社ではさらに、「ARIS-H(アリス・エイチ)」という地域の医療機関や介護施設といった、多機関での情報共有システムも開発した。

 「HAMIS」と「ARIS-H」の導入により、島田総合病院では経営面、業務効率化、外部との情報連携で大きな成果があるという。

 情報連携では、連携クリニックやケアマネジャー、介護関係者などから「必要な情報がすぐ届く」との声が上がっている。例えば訪問診療医の場合、「ARIS-H」の導入後はカルテ入力が完了すると、システムによって自動で情報がリアルタイム伝達される。また、医師不在時に他職種の職員が患者の質問に答えられるようになったほか、医師が診察に集中できるようになったという。


 電子カルテを中心としたシステム構築で院内の業務改善や経営改革、さらに地域との連携を深めるようになった島田総合病院とエスパイオン・メディカルテクノロジー。多くの病院が赤字経営に陥る中、「HAMIS」による全国の病院の経営支援に注力し、医療過疎地域の拡大を防ごうとしている。

▽株式会社エスパイオン・メディカルテクノロジー「HAMIS」
http://spaeon.co.jp/jp/sub2_1

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