
■USBメモリー不要
ソリトンシステムズ(東京都新宿区)は、ファイル受け渡しシステム「FileZen S(ファイル・ゼン・エス)」を提供する。ネットワーク分離環境でのファイル受け渡しのセキュリティーや運用・業務効率化などさまざまな課題を解決するソリューションだ。
医療機関では、医療情報を扱う病院情報システム(HIS)系ネットワークと、外部とつながるインターネット系とでネットワークが分離されていることが多い。その環境下で、HIS系とインターネット系の間でデータ受け渡しを行う際、USBメモリーを利用することも多い。しかしUSBメモリーは紛失や盗難のリスクが大きい。また、運用面でも、USBメモリーの貸し出し台帳を管理している場合があるなど、負荷がかかる。その代わりに、HIS系とインターネット系の間での「自分から自分へのデータ受け渡し」に特化した専用機器が、「FileZen S」だ。
「FileZen S」はネットワーク分離環境で「自分から自分へ」のファイル受け渡しを、シンプルかつ安全に行う。ウェブベースで「送る」「受け取る」機能を提供し、利用履歴の記録、ファイルの自動削除、受け渡し時の上長承認機能などがある。また、ファイル無害化製品との連携機能も備えている。USBメモリーのような物理的な受け渡し手段は使わず、ウェブベースで完結することがポイントとなる。また、操作画面であるユーザーインターフェース(UI)も操作がしやすく、USBメモリーなどから運用が変わっても、なじみやすくなるよう工夫している。
ソリトンシステムズでは、ネットワークを分離した環境で業務をしている医療や行政、教育、金融などの業界向けに、新しいファイル受け渡し装置として「FileZen S」を開発し、2020年から販売を開始した。ソリトンシステムズでは既存製品として、「FileZen」という自分から外部の人へのデータ受け渡しの製品を販売していたが、「FileZen S」は「自分から自分へ」のファイル受け渡しをシンプルに実行できるように特化した製品として開発された。
異なるネットワーク間でのファイルの受け渡しをドラッグ&ドロップで安全・確実に実行でき、一般的なファイル送受信システムにある宛先記入や、フォルダー選択、メッセージ記入などの操作は全て不要となっている。ネットワーク分離を画面でイメージ再現することで、ユーザーに情報セキュリティーを適切に意識させるようにする。
また、他社のファイル無害化製品と連携し、ファイルの受け渡しを行うだけで、自動的にファイル無害化処理が行われるような使い方も可能となっている。
ソリトンシステムズでは、年間保守サポートについて契約時に顧客が4つから選べるようにしている。
(1)センドバック
不具合のある製品をメーカーや販売店の窓口に送り、製品を修正してもらうか、同等の代替品を送る。
(2)代替機先出センドバック
不具合のある製品が特定され次第、同等品を発送する。
(3)平日オンサイト
現地へ職員が直接足を運び、復旧対応を行う。あらかじめ不具合の様子や状況などを電話やメールで顧客から詳しく聞き、その情報を基にスタッフが現地で作業する。平日のみの対応となる。
(4)24H365Dオンサイト
サポート内容は平日オンサイトと同様だが、対応が24時間365日可能となり、土日祝日関係なしに、故障時に即時対応できる。必要な情報を受け取ってから4時間での現地到着を目標とする。
■脱USBメモリーを実現
岐阜大学医学部附属病院(岐阜市)では、院内ネットワークからキャンパスネットワークへのデータ持ち出し時に、「FileZen S」を利用している。元々は、医療情報部でUSBメモリーを利用して、異なるネットワーク間のデータの受け渡しを行っていた。しかし、貸し出しごとの初期化や、ウイルススキャン、返却の確認といったメモリーの管理、さらには貸し出し時の台帳管理など、医療情報部に負担のかかる運用形態が課題だった。
また、医師をはじめとした医療職は、土日や夜間勤務中にデータを持ち出したくても医療情報部の窓口が終了しているため、USBメモリーを借りられなくてデータの持ち出しが行えず、時間外の対応要望が出ていた。このような課題を解決するために、「FileZen S」を導入した。
「FileZen S」の導入によって、USBメモリーの貸し出しはなくなり、台帳管理も「FileZen S」の操作ログで可能になった。操作ログは監査時にも活用できる。その結果、医療情報部の負担を減らすことにつながった。
医師も今までのようにデータを持ち出したい時に、医療情報部まで足を運ぶ必要がなくなった。運用開始して2年ほど経つが、医師たちの不便さも大幅に改善でき、診療や研究、教育に時間を有効活用できるようになった。医師から大変好評という。操作画面も分かりやすく容易で、医療情報部への問い合わせもほとんどなく、利用者である医師たちと管理者である医療情報部も共に業務改善につながった。
岐阜大学医学部附属病院の医療情報部では、「来なくてもいい医療情報を目指す」というスローガンを掲げている。まずは課題になっていたUSBメモリーの利用を廃止することで、病院DXへ一歩を踏み出した。今後も、病院内の業務改革を進め、病院のDX化を進めていきたいと考えている。
▽株式会社ソリトンシステムズ「FileZen S」
https://www.soliton.co.jp/products/filezens/
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