オンライン診療の可能性と課題を探る
大道・日病副会長、「メディカルジャパン大阪」に注目
【日本病院会副会長、森之宮病院院長 大道道大】
2018年度の診療報酬改定で「オンライン診療料」などが新設されたことにより、情報通信機器を使った遠隔診療の広まりが期待されている。オンライン診療が普及した後の医療提供の姿はどうなっているのか―。病院の立場から、その可能性や課題を探る。また、2月に開催される医療ICTなどの製品・サービスに関する展示会「メディカルジャパン大阪」の見どころを紹介する。
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■オンライン診療に頼り過ぎると病状悪化のリスクも
離島やへき地の患者に限定されず、さらにビデオ通話機能のように大容量の通信が一般的になった今、オンライン診療へのニーズが高まるのは当然の流れだ。オンライン診療と名付けられてわずか数年で保険診療に組み込まれたことからも、そのインパクトの大きさが分かる。今後の診療報酬改定でも、現在の糖尿病や認知症といった慢性疾患への継続治療に対象が限られなくなるのではないだろうか。オンライン診療によるメリットは、患者の通院にかかる時間や診察までの待ち時間が減ることだ。院内での感染のリスクも軽減されるだろうし、通院が必要な患者の待ち時間も減ることから、医療機関にとってもメリットは大きい。
ただし、オンライン診療は、状態が安定している慢性疾患に対してはいいが、それだけで検査はできないので万能ではない。また、患者がオンライン診療に依存し過ぎてしまって必要な対面診療を受けなくなり、病状が悪化するというリスクも考えられる。こうしたことが起こらないように、患者に対して定期的な通院も勧める必要がある。
これらの懸念点を踏まえると、現在のようにさまざまな制約が付くことになる。新設のオンライン診療料やオンライン医学管理料などは、初めて算定してから6カ月の間は毎月同一の医師により対面診療を行っている場合に限り算定することなどが要件となっている。しかし、これらの制約は、運用しながら徐々に適用の範囲を拡大することが重要なのではないか。例えば、花粉症といった比較的リスクが少ないと思われる症状もオンライン診療の対象になれば、どんどん広まっていくだろう。受け入れる医療機関側と患者とをつなぐアプリの発達にも期待したい。
■オンライン服薬指導の普及は双方にメリット
18年11月の経済財政諮問会議などの合同会議で示された「経済政策の方向性に関する中間整理」では、「診療から服薬指導に至る一連の医療プロセスを一貫してオンラインで受けられるよう、オンラインでの服薬指導について、その提供体制の整備や法制的な対応も含めて検討を進める」との方針が掲げられている。服薬指導についても、国はオンラインでの実施が普及するような体制作りを目指している。
病状の重い患者がオンライン診療によって通院の負担から解放されるようになったとしても、薬をもらうために薬局へ出向かなければならないのなら、情報通信機器の利用によるメリットが半減するという指摘があるのは確かだ。服薬指導に関しても、オンラインで一般的に実施できるようになれば、患者側と医療提供側の双方がメリットを享受できる。
さらに、電子処方箋が認められるようになれば、処方箋の原紙がなくても患者は薬を受け取ることができ、「在宅医療」が完結することになるだろう。制度の設計と共に、処方箋のような重要な個人情報の漏えいをどう防ぐかなどは課題だが、医療分野のICT化への期待は大きい。
■医療・介護の情報連携で現場はどう変わるか
個人の健診・診療・投薬に関する情報が医療機関の間で共有できる「全国保健医療情報ネットワーク」が20年度をめどに本格稼働する見通しだ。これが本格的に稼働すれば、患者本人だけでなく医療・介護関係者が過去の病歴も含めて、より詳細な情報にアクセスすることが可能になる。うまく利用すれば、がん予防にも生かせる可能性もあるほか、要介護度の進行を遅らせることもできるかもしれない。現場で働く人の業務負担の軽減にもつながるだろう。情報共有やビッグデータ化への期待は大きい。
ただ、まず重要なこと、実現すべきことは、日本のどこであっても患者が住み慣れた地域で切れ目のない医療や介護を受けられることだ。そのためには、病院や「かかりつけ医」、薬局、介護事業者というさまざまな立場での情報共有が欠かせない。
また、忘れてはならないのは、「情報だけ」の連携では無意味だということ。情報を扱うのは人だからだ。医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師から、介護現場や在宅医療を支える人に至るまで、患者・利用者のためにどこまで目的意識を共有できるか。これが、本当の意味での情報連携を成功させる鍵となる。
■メディカルジャパン大阪は「真剣な相談や製品導入の場」
医療分野のICT化に関しては、19年2月20日から22日まで大阪で開かれる「医療と介護の総合展 大阪」(通称・メディカルジャパン大阪)に注目したい。リード エグジビション ジャパン株式会社(東京都新宿区)が、日本病院会と共同主催するこの展示会には、世界20カ国から780社が出展し、西日本を中心に病院やクリニック、介護事業所の関係者ら約3万人が来場する。
主催者の蒲原雄介事務局長(リード エグジビション ジャパン株式会社)によると、第5回となる今回は、医療分野では国内外の最新の医療機器や設備、電子カルテ、画像システムなどのIT製品が出展されるほか、病院運営を支援するコンサルティングや業務支援といったサービスも紹介。介護分野ではベッドや入浴設備はもちろん、介護食品、介護ロボット、介護AI、さらに現場で一番の課題となっている人材不足に対応するためのソリューションも展示される予定だ。
今回の目玉は、新設の「BCP・災害対策フェア」「クリニック支援フェア」「薬局支援フェア」。前回の出展企業や来場者からの多数の要望を受けて、新たに設けることにした。厚生労働省が災害などの緊急時の事業継続計画(BCP)の策定を医療機関に求めている中、「BCP・災害対策フェア」では非常用の電源や通信機、備蓄品をはじめ、災害時に医療機関としての機能を守るための多様な製品が出展される。
「クリニック支援フェア」では、新規開業・改装に必要な設備や機器が並び、「薬局支援フェア」には従来の調剤業務に必要な機器や設備だけでなく、開業支援、人材支援サービスのほか、電子薬歴システムなども展示。この3つの新たなフェアによって、来場する魅力が前回よりも増した。
展示会というと、どうしても製品のお披露目やPRの場と捉えられることが多いが、メディカルジャパン大阪の大きな特長は、「真剣な相談や製品導入の場」ということ。会場内の各ブースでは毎回、来場者と出展企業が活発に相談。技術者が常駐しているブースも多く、来場者は技術に関する相談をしながら、見積もりや納期の打ち合わせをすることができるようになっている。
■特別講演「社会保障と財政」、財務省の宇波主計局次長が登壇
メディカルジャパン大阪では毎年、併催のセミナーも注目を集めている。今回の初日に行われる特別講演のテーマは「社会保障と財政」。財務省の宇波弘貴主計局次長が講演する予定で、受講申し込みのペースが予想以上に速く、反響が大きい。ほかにも、「医師の働き方改革がどうなるか」「大阪の地域医療構想」「人材マネジメントの事例」といったテーマの講演もあり、医療関係者の参加が多くなりそうだ。
昨今では、質の高い医療・介護サービスの提供とともに、コスト削減や現場の負担軽減、業務の効率化、人材不足への対策、新たな設備の導入といった課題の解決が求められている。メディカルジャパン大阪には、それらの課題を解決できる製品やサービスが展示され、日本の医療・介護業界で生き残る上で必見のイベントとなっている。
展示会招待券のお申し込みはここをクリック。
事前にお申し込みいただいた場合は無料ですが、当日招待券をお持ちでない場合は、入場料5000円がかかります。
医療介護経営CBnewsマネジメント
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