【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
社会保障審議会の介護保険部会で現在、次期介護保険制度改正の議論が進行中だが、介護関係者の中に「改正はこの制度を進化・成熟させるものだ」と勘違いしている人がいる。制度改正で重視すべきなのは、限られた財源をより必要なところに重点的に手当てすることである。そのため、2021年度の改正以降は人材が足りなくなる対策として介護現場の生産性をいかに向上できるかという視点から、その方法をつくり出すために財源を支出している。LIFE(科学的介護情報システム)に関連する加算や、生産性向上推進体制加算が新設されたのもその一環だ。
すなわち、制度改正は制度を持続させることを第一の目的としており、国民や介護関係者が望むようには必ずしもならない。むしろ、それは国民の痛みを伴うものでもある。現に2000年に介護保険制度が創設された後、予防給付が新設追加されたのは介護予防の推進力が強化されたわけではなく、介護給付より少ない財源支出サービスを新設したという意味に過ぎない。国民にとってそれは給付抑制策と言っても過言ではない。従って介護保険部会で厚生労働省が新たに提案する方策が全て、国民や介護事業者にとって明るい未来につながると考えるのは大きな間違いである。
6月2日の介護保険部会で、厚労省が介護認定の一次判定内容の見直しを検討するための調査を行う方針を示した(厚労省資料)。このことについてあるアンケートでは、現役ケアマネジャーの7割近くが一次判定の見直しに賛同したとの報道がある。しかし本当に見直しの必要があるだろうか。
15年以上同じ基準で判断している状態を「おかしい」と言う人がいる。しかし、さして問題のない基準なら、その継続期間は決して長くない。暮らしの変化と基準がマッチしなくなっているという明確な理由があるなら変更は必要だろうが、そんなものがあるだろうか。
■ケアマネの処遇改善にこそ予算措置を
現行の一次判定ソフトが、施設サービスを基に調査したデータによるものだから、居宅サービスのケアの実情に合わないことと、認知症の方の介護の手間が反映しにくいことが変更理由だと指摘する人がいるが、それは大きな間違いである。確かに02年までの一次判定ソフトは、
(残り3494字 / 全4431字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】


