【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■集約化を推し進めることに重きを置いた対応策
厳しい病院経営の改善を図り、外科医不足に歯止めをかけるための対応案として、前回は次の4つを挙げ、1-3について述べた。
1. 外科手術自体の点数引き上げ
2. 外科医師を対象としたベースアップ評価料のような点数を設定
3. 手術の休日・時間外・深夜加算の引き上げ、平日日勤帯への適用拡大
4. 急性期充実体制加算、総合入院体制加算などの点数引き上げ
厚生労働省は、外科医不足への対応として施設の集約化を進める必要性を示している(CBnewsの関連記事 「がん医療体制、集約化の検討求める 厚労省」)。もし、外科手術自体の点数が引き上げられ収益性が改善すれば、むしろどの施設も手術件数を増やそうとするだろう。つまり案1は集約化に逆行する。案2も同様で集約化には貢献しない。案3は届け出のハードルが高く、集約化に貢献する可能性はあるが、集約化を強力に推し進める対応とはならない。
そこで今回は4つ目に挙げた「急性期充実体制加算、総合入院体制加算などの点数引き上げ」により、病院経営改善と外科医不足解消、集約化の3つを同時に実現できるかについて考える。
■集約化しなければ届け出ることができない急性期充実体制加算
2022年度診療報酬改定で急性期充実体制加算が新設された当時、その高い点数設定に驚いた。医薬品や診療材料の費用高騰や消費税負担が重くのしかかる高度急性期機能を担う医療機関にとって、病床稼働を高めることに加え、入院単価アップは重要な取り組みになっている。入院単価アップの対策には、病床高回転化、手術や薬物治療の患者増加、急性期充実体制加算の算定、DPCの機能評価係数IIの向上などが挙げられる。これらの対策の中で、急性期充実体制加算や機能評価係数IIのようなインセンティブは、直接コストがかかるわけではない。そのため、多くの医療機関において、とりわけ重要な取り組みとして認識されている。
急性期充実体制加算の施設基準には「全身麻酔による手術について、2,000件/年以上(うち、緊急手術350件/年以上)」がある。DPC退院患者調査のデータ提出病院を対象に、二次医療圏の人口規模別に「全身麻酔あり」の退院患者数の施設割合を比較した=グラフ1=。
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次回配信は10月15日を予定しています
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