CBnewsでは、医療経営の厳しい現状や国への要望を病院のトップから募り、緊急寄稿「病院危機」として随時配信している。第7弾は、総合病院国保旭中央病院の野村幸博統括病院長。
【地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院 野村幸博統括病院長】
全国自治体病院協議会は今年7月、会員病院を対象に2024年度決算状況に関する緊急調査を行いました(有効回答687病院)。その結果、経常損失を生じた病院は全体の86%(23年度は70%)、医業損益を生じた病院は95%を占めました。赤字の要因は、ご多分に漏れず、収益の伸びを上回る人件費・材料費の高騰です。地域の役割別では、不採算地区に所在する中核病院(152施設)のうち赤字割合は92%、救命救急センターを有する病院(100施設)の赤字割合は93%。病床規模別では、100床未満の病院(165施設)の赤字割合が73%であるのに対し、400床以上の病院(144施設)の赤字割合は94%でした。
つまり、地域医療の要として救急医療を担う大規模中核病院ほど経営状況が悪化しているということです。昨今の経済環境においては、巨額の人的・物的投資が必要となる急性期中核病院で経営が悪化するのは当然でしょう。このような状況は、公立・公的病院だけでなく民間病院も同様であろうと思います。
ここで問題となるのは、地方においては中核病院の経営危機によって地域医療だけでなく地域社会全体に悪影響が及ぶかもしれないということです。地域の中核病院は医療の提供だけでなく、その地域の雇用の創出という役割も担っているからです。中核病院が規模や機能を縮小したり閉院したりすれば、地域の雇用状況は悪化するでしょう。仕事が無く、医療提供体制も崩壊しつつある地域に住みたいと思う人はいないでしょうから、そのような地域では人口減少に拍車がかかることになります。
最近は看護師などの人材不足から病院規模を縮小するという逆のパターンも見られるようになってきており、このままでは地方の人口減少と病院危機とが互いにネガティブな影響を与えて悪循環に陥ってしまいます。つまり、病院の危機がこのまま進むと地域社会そのものの崩壊につながるかもしれないということです。国には、地方創生を進める立場からも、地域社会の持続可能性を確保するため病院危機に迅速に対応していただきたいと切に願います。
さて、当院は千葉県北東部に位置しますが、ここは千葉県の中で最も人口減少率が高い地域です。当院は地域で唯一の大規模高度急性期病院であり、1953年の開院以来一貫して黒字経営を続けてきましたが、新型コロナ支援金が終了した2023年に初めて赤字決算となり、「入るを量りて出ずるを制す」の精神のもと収入増と支出減に取り組みました。24年は良好な業績(一般病床利用率92%、入院単価8万5,500円、1日平均外来患者数2,200人)を上げるとともに、医療機器・IT関連予算の大幅圧縮などにも取り組みました。しかし、経営改善には至っておらず、手詰まりの状態です。
また、前段で述べたように当院の経営危機は地域に大きな影響を与えますので、救急医療など医療提供体制を維持するために職員は懸命に働いていますが、正当な対価が支払われていないように感じます。国には、こうした現場の状況を把握した上で、診療報酬改定や補助金など地域医療を継続するための支援を強く希望します。
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