【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
筆者は介護事業者から依頼を受けて、介護職員のメンタルヘルス不調を予防する取り組みに協力することがある。その際は介護職員全員と個別の面談機会を設けて、職場内で感じるストレスはないか、あるとすれば具体的にどういうものかを調査する。ただし、初回面談からストレスの原因(ストレッサー)が確定できる人は少ない。多くの場合、本人にも自覚がないストレスがジワジワと心を蝕むのである。そういう人びとに面談を重ねてストレッサーを特定していくわけだが、多くの場合、それは「人間関係」であり、上司や同僚の存在がストレッサーであることがあぶり出されてくる。
ストレッサーを特定しなければならない理由は、メンタルヘルス不調の原因となるストレスを解消あるいは緩和するためにはストレスを感じた時の問題を正確に捉え、ストレスの要因や自分の感情への働きかけによるストレス対処法(ストレスコーピング)が必要になるからだ。例えば、ストレッサーが特定の人間の行為である場合、直接相手に「やめてください」と伝えて、問題となる状況が再発しないように働きかける必要もある。それが無理なら上司に状況を訴えて配置転換をしてもらうことも必要だし、それも困難である場合は、自分の心と身体を守るために自分自身にとってストレスフルな職場を辞めるという判断も必要とされる場合がある。
他者との人間関係がストレッサーと思われる際の具体例とは、パワハラ・モラハラ・セクハラ・いわれなき暴言などだが、介護業界で意外と多いのが「上司や同僚による、利用者に対する不適切な対応」である。利用者に対するあからさまな暴力・暴言というわけではなく、
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