生成AIがGP担う可能性も、不得手も把握を
近大医学部・大塚氏が講演 ウォルターズ・クルワー協賛セミナー PR
臨床現場でも生成AIの活用が広がっている。一方でチャットGPTをはじめ多くの生成AIが登場する中、果たして使い勝手は。10月23日のCBセミナー(主催:CBホールディングス、協賛:ウォルターズ・クルワー・ジャパン)で講演した近畿大学医学部皮膚科学教室・主任教授の大塚篤司氏は、自身の経験を踏まえ、生成AIの使いやすさや問題点などを指摘した。
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67.2%-。この数字は、チャットGPTを運営するオープンAI社が、実際の医療相談シナリオを模倣した5,000件の対話から、医師が設定した評価基準をどれだけ満たしているのかの割合という。大塚氏は、数字の高低は個人の感覚で違うとしながら、自分の専門外で問診した場合これだけ高い数字が取れるのかとし、「GP(総合診療医)に近い役割を担う可能性も出てきた」と語った。
講演では、チャットGPTをはじめGoogleの「Gemini」など多くの生成AIの活用方法を紹介。AIと対話した際に、必要な診療ガイドラインを1つのフォルダーに入れておくと、その中から回答を引っ張ってくる「ノートブックLM」(Google)の事例を共有。「他のホームページからの回答が減り、自分が欲しい情報から回答が得られ、自分専用の図書室を持っている感じだ」と話した。
また、ノートブックLMには音声や動画も生成AIでつくる機能がある。「学生配布用の音声付きプレゼン資料や、コメディカルの教育や患者さんへの説明に使う資料ならば動画付きでというように、Googleが出すAIツールの使い方はさまざま」(大塚氏)とした。
一方で、臨床分野での生成AIの限界を指摘した大塚氏。論文を書く際の注意点として、まず、フィギュア(図)の作成は使わないことを挙げた。「最近、チャットGPTも上手になってきましたが、左側の病理は皮膚科専門医から見るとちょっとおかしいなと思いますし、右のメラノンはわからないですね。人体の構造に関してはまだ正確に書くことは難しい」と強調した。(資料1)

また、統計解析にも使わないよう注意を呼び掛けた。大塚氏によると、計算間違いするケースがあるという。「自分で計算し直す手間を考えると、統計の計算をやらせずに、それ以外のことをAIにやらせたほうがよい」と話した。ほかにもAIが苦手なこととして人間的な表現の限界を挙げ、同門会の寄稿文の作成への生成AIの活用について大塚氏は消極的だった。
こうした生成AIの限界が、1本の論文取り下げに至るケースも。生成AIが作成した存在しない細胞の図をそのまま載せてしまったり、文章の中にコピペしたAIの名残がそのまま論文に載かってしまっていたりしたケースもあったという。(資料2・3)


生成AIが実在しない文献や情報源をあたかも実在するように提示するリファレンスハルシネーションの問題も見逃せない。大塚氏によると、チャットGPTが出した115件の論文の47%が架空のものだった報告もあるという。「チャットGPT-5を使って文献はつけないというのが原則だ。アメリカでは、リファレンスハルシネーションの問題になって弁護士が処分を受けるというケースもあるので注意が必要だ」と強調した。
検索プラットフォーム AI搭載でより迅速に把握
この日は、ウォルターズ・クルワーのディアコノボリス氏が「AIによる文献発見の強化」について講演した。同社は、ヘルス、生物医学、薬学の電子ライブラリに特化して開発した世界最先端のディスカバリ・プラットフォーム「Ovid® Discovery」を運営。標準インデックスには現在5億5000万件以上の電子リソース、200万件以上のユニークなナレッジベース項目がある。
このプラットフォームにAIを結合させ、検索精度をより高めている。ボリス氏は、検索AIの主な利点として、▽文脈に基づくマッチング▽リコール(検索網羅性)の向上▽ノイズの削減▽柔軟性の向上-の4つを挙げた。文脈に基づくマッチングについては、「単なるキーワードの一致を超えてクエリと文章の意味を理解し、より関連性の高い結果を返す」説明した。
リコールの向上では、例えばアルコールがうつ病に与える影響というクエリに対して、アルコールのメンタルヘルスへの影響といった文章もヒットし、異なる表現でも意味が近い文章を検索可能に。同時に、ノイズの削減機能により、大恐慌時代のアルコール消費のように、キーワードは一致して言っても意図と異なる文章を除外できるという。また、柔軟性の向上から、ユーザーは正確な語句を入力せずに、例えばアルコール使用とアルコール乱用のような表現の違いに対しても対応可能だ。ボリス氏は「AIによって設定された要約は、主要な知見や発見を分かりやすく統合した内容だ」と強調する。(資料4)

新たに投入した日本向け製品では、検索結果の上位10位を日本語で自動的に要約する機能を搭載。ボリス氏は「長文の研究論文の要点を迅速に把握でき、ユーザーの貴重な時間を節約できる」とし、忙しい臨床医や研究者が最新のエビデンスを把握するのにも役立つと力強く語った。
ウォルターズ・クルワー:https://www.wolterskluwer.com/
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