医院開設に新たな手法
不動産投資ファンドという選択(上)
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これを可能にしたのは、独立系資産運用会社スパークス・グループ(港区、阿部修平社長)の子会社「スパークス・アセット・トラスト&マネジメント」(同区、諌山哲史社長)が運用する不動産投資ファンドの力を借りたからだ。
スパークス・グループの阿部社長は、同グループの戦略で医療分野を強化する方針( =関連記事= )を打ち出している。そこでスパークス・アセット・トラスト&マネジメントも、将来の重点投資分野に、病医院の入居するビルや老人ホームなどを挙げ、その一環として、このクリニックの開発投資を決めた。スパークス・アセット・トラスト&マネジメントでは今後、新規に建設する病医院だけでなく、建て替えや耐震工事など既存物件への投資も拡大する方針だ。
「特別講演会」にご招待
スパークス・アセット・トラスト&マネジメントとCBnewsは10月27日(木)、
東京ビッグサイトで開かれるHOSPEX Japan 2016内で「病院建て替えのコストダウンと病院経営の新・不動産戦略」と題した無料セミナーを開催します。受講者は150人限定。セミナーの詳細はこちらをご覧ください。
■「1人開業なら銀行借り入れで無床診療所だったかも」
2つのクリニックが入居する建物の総事業費は20億円を超える。東京ヒップジョイントクリニックは整形外科を標榜し、人工股関節置換手術を専門とする。2つの手術室や入院病棟のほか、リハビリテーション室が整っている。同じ建物の1階に、画像検査・診断を専門にする東京メディカルイメージングクリニックも入居し、大学病院レベルの最新鋭の1.5テスラMRI(磁気共鳴画像装置)のほか、最新型の320列エリアディレクターCT(コンピューター断層撮影装置)がある。
◎映像による解説は下記動画をご覧ください。
東京ヒップジョイントクリニックの狩谷院長は47歳。金沢医大卒業後、昭和大病院整形外科などで経験を積んできた。狩谷院長が、このクリニックのお手本にしたのが、米バージニア州にある、年間1000件を超える人工股関節置換手術をしているクリニックだ。そこではクリニックが手術に特化し、術後の患者は病院に入院してリハビリをするというモデルを実践していた。
狩谷院長は、この米国のモデルを日本に導入しようと考えたが、資金繰りでの限界が立ちはだかった。そこで出会ったのが、不動産投資ファンドだった。狩谷院長は、「1人で開業を考えたら、銀行などから借り入れをして無床診療所くらいでしたが、ファンドを活用することで十分な設備が整い、医療に集中することができます」と話している。
人工関節置換術には医療保険が適用される。東京ヒップジョイントクリニックは保険医療機関として、厚生局に届け出ている。保険診療で人工股関節手術を、股関節痛などに長年、悩んでいる患者に提供していく。 狩谷院長は、月水金の週3日を外来診療に充て、残りの火木土の3日間を手術日とした。最大で年間500件程度の手術が可能だが、当面300件のペースでスタートする見込みだ。東京ヒップジョイントクリニックには手術室が2つあることが、手術件数の増加に寄与しそうだ。
東京ヒップジョイントクリニックの人工股関節手術は、手術日から10日以内の退院を目指している。そのため、手術の翌日から、建物内のリハビリテーション室で、リハビリを開始する。リハビリの効率を上げるために、手術をすることが決まったら、経験豊富な理学療法士が患者に事前にカウンセリングを実施。患者の筋力を測定し、術後の回復を早めるために、筋力アップを始めてから手術に臨んでもらう。これにより、早期退院につなげる。
人工股関節手術の専門医院であることを周知し、地域での医療連携を強化するために狩谷院長は、ここに開業するに当たり、地区医師会である世田谷区医師会の9部会に入会した。開業前から地域の整形外科クリニックにあいさつ回りを行い、また患者が退院した後の受け入れ先となる回復期リハビリ病棟を持つ病院にも連携をお願いしたりした。
さらに、新たな取り組みとして、原因不明の股関節の痛みに悩んでいる患者を吸い上げるために、近隣の接骨院も回り、人工股関節手術の専門医院であることを知らせてきた。
■階下の画像検査・診断専門クリニックと二人三脚で運営
東京ヒップジョイントクリニックの階下にある東京メディカルイメージングクリニックの池田院長は狩谷院長と二人三脚で、人工股関節手術を進めていくことになった。池田院長は佐賀大卒業後、鹿児島大病院放射線科に入局し、放射線診断専門医として診療を続けてきた。
放射線診断専門医が画像診断で使う機器は、数億円単位の高額なものばかりで、1人の医師で開業することはほとんど不可能だ。池田院長が、クリニックを開業して一国一城の主になれたのも、不動産投資ファンドを活用したからにほかならない。
通常の診療では、近隣のクリニックなどから紹介があった患者のMRIやCTをすることになるが、狩谷院長が診察した股関節痛などのある患者の画像を診断したりするほか、新たに「股関節ドック」も始める考えだ。 池田院長は、「このクリニックには総合病院や中核病院並みの機器がそろっているので、検査をしようとする上での自由度が大きくなります。狩谷先生の患者さんの術前診断はもちろんこなせますし、狩谷先生が必要と考える幅広い画像診断のニーズに対し、それも迅速に応じていくことができます」と話している。
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スパークス・アセット・トラスト&マネジメントとCBnewsは10月27日(木)、
東京ビッグサイトで開かれるHOSPEX Japan 2016内で「病院建て替えのコストダウンと病院経営の新・不動産戦略」と題した無料セミナーを開催します。受講者は150人限定。 セミナーの詳細はこちらをご覧ください。
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