日本医師会ドクターバンク、全国ネットワーク構築へ始動
医師偏在の是正へ複合的アプローチ PR
日本医師会は2025年11月、医師のキャリア支援と地域医療の担い手確保を目的に「日本医師会女性医師バンク」を「日本医師会ドクターバンク」に改称し再始動させた。07年から運営してきた女性医師バンクの機能と知見を基盤として、厚生労働省から受託した「医師偏在是正に向けた広域マッチング事業」を加え、全国規模のマッチング網の構築に乗り出している。名称変更直後の11月(単月)には、医師の新規求職登録が前年比4倍強、施設の新規求人登録が12倍強に急増し、医療界の強い関心を裏付けた。角田徹副会長(日本医師会ドクターサポートセンター長)と松岡かおり常任理事に、事業の現状と展望を聞いた。
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■復職や就業継続ならびに偏在解消へ全世代を対象とした無料マッチング
医師偏在の問題は今に始まったことではない。角田副会長は「2004年度からの新医師臨床研修制度の導入により医局機能が低下して以降、偏在はより顕著になりました。さらに地域・診療科・施設の三つの偏在が複合的に絡み合っています」と語る。同時に、若い世代を中心にワークライフバランスへの意識が高まり、育児や介護との両立を前提とした働き方が標準化しつつある現状も指摘する。
こうした状況に対応するため、日本医師会は2024年8月に「医師偏在に対する日本医師会の考え方」を公表し、その柱の一つとして「全国レベルの医師マッチング支援」を掲げた。松岡常任理事は「公的・公益的な立場の医師会が無料で公平なマッチングの受け皿を担うことに大きな意義があります。大学医局の機能低下後、医師も医療機関も行き先を失い、有料紹介事業者への依存が高まっていました。その流れを変える仕組みが必要でした」と事業の背景を説明する。
事業の対象は全ての医師と医療施設だ。民間の職業紹介事業者が医療施設に対し成功報酬として年収の20〜30%程度を求めるのに対し、日本医師会ドクターバンクは求職・求人の双方から手数料、成功報酬を一切徴収しない。
■「週一回から」のお試し就業と広域連携で選択肢を拡大
マッチングの特徴は、専任コーディネーターによる丁寧な伴走支援にある。松岡常任理事は「報酬の吊り上げ交渉ではなく、求職者と求人施設双方にとって最善の条件を一緒に探るのが私たちのスタンスです。女性医師のライフイベントに向き合い続けた19年の経験から、制度面の調整からキャリア形成の相談まで幅広いノウハウが蓄積されており、性別を問わず全ての医師のドクターライフを共に考えながら、シニアを含む全世代への支援に生かしていきます」と強調する。2026年4月には、転職決断前の段階から医師のキャリア相談を受け付ける窓口の設置も行う。
地域定着を促す現実的なアプローチとして両氏が強調するのが、段階的な就業形態の活用だ。いきなり常勤赴任ではなく、まず週一回の非常勤から始め、互いの相性を確かめながら日数を増やしていくケースもある。角田副会長は「最初から全てを決める必要はありません。週一日からでも試してみて、徐々に関係を深めていけばいい」と述べる。こうした「お試し就業」から最終的に診療所の事業承継に至った事例もあり、柔軟な入口が定着への道を開くことを示している。
■リカレント教育事業との連携や地域ドクターバンクとの広域連携の充実も進める
診療科偏在の問題是正にも寄与する仕組みを設ける考えだ。高齢化で複数疾患を抱える患者が増えるなかで、医療資源の乏しい地域における総合的な診療能力を有する医師へのニーズは高まる一方であり、医療機関側の意識も変わりつつある。松岡常任理事は「専門医でも、リカレント教育で総合的な診療能力に関する知識を補えば地域医療の即戦力になり得ます。厚労省の医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージのリカレント教育事業と連携し、マッチングまで一貫した支援体制を整えたい」と述べる。
広域連携の強化も進む。医師会系・行政系の地域ドクターバンクが存在する42都道府県と業務提携を逐次進め、求職者・求人情報を都道府県の垣根を越えて共有する仕組みを構築する。松岡常任理事は「県単位のバンクだけでは拾いきれない広域のニーズを私どもがつなぎます」と述べる。現在3つの地域ドクターバンクとの提携が完了しており、3月末までにさらに10程度を追加する。
2026年4月にはウェブサイト全面リニューアルを行い、同年度内にスマートフォンアプリの開発も検討する。角田副会長は「復職や就業継続のための転職を今は考えていなくても、将来の選択肢を広げるという意味では登録する価値があります。医師として積み重ねた経験や技術を生かせる場をここで見つけていただきたい」と呼び掛けている。
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