まず、設立式でも概要を説明した生活支援と配食サービスのガイドラインを4月中旬に協会ホームページで公表する。このガイドラインを順守できているかを審査し、利用者が安心してサービスを利用できるように信頼性の担保を図るのが「100年人生サポート認証」という認証制度だ。8月から認証審査の受け付けを開始し、10月から審査を行ってサービスへの認証を承認する。
-この認証制度を構築する意義は。
介護保険外サービスでは、買い物代行や書類の代筆、通院の付き添いなど介護保険では賄えない細やかなサービスを提供する。介護現場では、介護支援専門員(ケアマネジャー)や自治体担当者も要介護認定者やその家族に保険外サービスを紹介したいというニーズがある。ただ、利用者宅を訪問し、サービスを提供するケースが多いため、悪質な事業者とトラブルが生じることへの懸念も指摘されている。そのため、サービスの内容や提供などについて一定の基準を満たした事業者を認証することで、利用者が安心してサービスを受けられる仕組みを構築することがこの認証制度の目的である。
また、この認証制度とセットで必要だと考えているのが、各市区町村で保険外サービスを提供する事業者や認証登録事業者をリスト化した冊子である。協会ではこのリストを作成し、自治体やケアマネジャーらに配布することを考えている。これにより、要介護認定者やその家族に保険外サービスを紹介しやすい環境を整備し、産業化の促進を図りたい。
25年度はまず、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫の8都府県で各市区町村のリストを作成予定で、可能であれば3年目くらいまでに全市区町村の事業者をリスト化したいと考えている。
-リストは定期的に更新するのでしょうか。
新たに認証を取得した事業者を反映させる必要があるため、毎年更新し、冊子を作成する予定だ。
また、認証制度の構築と事業者リストの作成に加え、活用事例の紹介も進めたい。保険外サービスをアボカドに例えてみたなら、認証制度が安全性の保証で、事業者リストがスーパーなどの店頭に並べること。活用事例はレシピに相当する。アボカドが日本ではまだなじみがなかったころは、この3つがそろうことで消費が進んだと言える。利用者やその家族にとって有用な保険外サービスの活用の仕方を紹介することで、保険外サービスの普及につなげたい。現段階で詳細は未定だが、ケアマネジャーのなじみのある方法で周知したいと考えている。
これまでは、自治体が管轄する場で事業者が自社サービスの紹介をすることは、公平性の観点から認められず、保険外サービスが普及しにくいという壁があった。そのため当協会が間に入り、特定の事業者ではなく保険外サービス全体の普及を後押しする取り組みが可能になる。こうした面でも、協会設立の意義は大きいと言える。
-保険外サービスの普及により、利用者からのさまざまな依頼に対応せざるを得ないケアマネジャーの業務負担軽減につながるという期待も大きいですね。
ただ、介護保険外サービスを受けている人は経済力のある人ばかりではなく、保険外サービスが普及したとしても利用料を負担できない人も少なくないと考える。まずは本来業務外としてケアマネジャーが担っている利用者からの依頼業務について、利用者の状況も含めた実態を詳細に把握する調査が必要ではないか。その上で、行政が保険外サービスの費用の一部を負担できるような仕組みを設けるなど、保険外サービスを利用しやすい環境を整備する必要があると考える。
また介護と仕事の両立ができず、介護離職をする人は毎年10万人に上っている。保険外サービスは、こうした「ビジネスケアラー」に対し、介護保険でカバーできないサポートを担うことが可能であり、介護者が勤める企業が福利厚生として保険外サービスの費用の一部を負担するような仕組み作りも有効かもしれない。
保険外サービスの普及は介護業界の課題でもあり、産業化を加速させるためにスピード感を持って取り組みを進めたい。25年度中に予定している8都府県での事業者リストの作成も可能であれば前倒しで進め、年度内のエリア拡大も検討していきたいと考えている。
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