【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
厚生労働省は、医療政策の企画・立案や医療機関の経営支援に活用するために医療法人経営情報データベース(MCDB: Medical Corporation Financial Database System)を整備し、医療法人が報告する情報を収集している。同省は、このデータベースと病床機能報告のデータを結合し、これらを基に9月18日、中央社会保険医療協議会の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」に急性期一般入院料1を算定する病院の収支状況を報告した。
そこでの結論は、急性期一般入院料1を算定する病院では、救急搬送の受け入れ件数が多くなるほど医業収益と医業費用がいずれも大きくなっている。また、医業利益率については、救急搬送の受け入れ件数によってばらつきがあり、救急搬送件数が多い病院では低い傾向にあることが示された=図表1=。このことは、救急医療は赤字であるということを暗に示唆しているように感じられ、「救急医療は政策医療だ」としばしば繰り返される公立病院の主張と整合的でもある。
■救急医療は包括範囲出来高点数が高く、持ち出しが増える
さらに、DPC対象病院では、急性期一般入院料1の算定病床における1患者1日当たり包括範囲出来高点数は、救急搬送受け入れ件数が多くなるに連れて高くなる傾向があるという。救急搬送の受け入れが1,200件未満の病院では、受け入れ件数と全身麻酔手術件数が多い病院で包括範囲出来高点数が高いことも示された=図表2=。
1日当たり包括範囲出来高換算点数は医療機関群の評価で用いられる実績要件の診療密度に近しいため、包括点数に対する包括範囲出来高点数の比を医療機関群別に見たものが図表3である。ここから大学病院本院群、DPC特定病院群、DPC標準病院群の順に縦軸の診療密度が高く、さらに、DPC標準病院群でも救急搬送の受け入れ1,200件以上の病院でこの比率が高い傾向にあることが明らかにされた。
これらを総括すると、救急医療は包括範囲出来高換算点数が高くなるため、DPC/PDPSでは持ち出しが多くなり、
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次回配信は11月上旬を予定しています
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