データ統合基盤で医療DXを加速 藤田医大病院・今泉氏
「メディカルジャパン東京」講演より(3) PR
10月に千葉市の幕張メッセで開催された「メディカルジャパン東京」(主催:RX Japan)には3日間で約1万5,300人の来場者があった。そこでは医療や介護、薬局に関する全84講演(出展社セミナー含む)も行われた。CBnewsは、病院経営のヒントになる4つの講演を連載で紹介する。3回目は「藤田医科大学病院が挑むリアル×AI融合型DX」をテーマに講演した藤田医科大学第一教育病院 病院長の今泉和良氏。
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藤田医科大学は4病院体制で運営しており、理事長直下のデジタル戦略部を中心に、データ標準化基盤の構築とAI活用による業務効率化を組織的に展開している。今泉氏は「藤田医科大学の一つのいいところは、決断が早い、それから行動が早いこと」と述べ、トップダウンによる迅速な意思決定が推進力となっていると強調した。
取り組みの核となるのが、「FRハブ(FR Hub)」と呼ぶメディカルインテリジェントゲートウェイの構築だ。4病院で185を超える医療システムが稼働しており、それぞれ異なるベンダーのシステムで構成されている。これらを統合するため、電子カルテや検査記録などのデータを標準化してデータレイクに集約する第2層の基盤を開発。個別システムごとに接続する負担を軽減し、AI活用や病院間でのデータ共有が容易になりつつある。
このデータ基盤を活用した退院サマリーの自動生成システムが2024年2月に実装された。23年10月の開発開始当初は精度に課題があったものの、AIエンジンの変更やプロンプトの改善を進め、33診療科で2,400症例のレビューを実施した結果、約9割の医師が「使用可能」と評価している。診療科によって評価に濃淡があり、整形外科では高い評価を得た一方、精神科では文章情報の多さから精度が低くなる傾向があるという。呼吸器内科では使用頻度が約8割に達している。
音声入力システムも導入が進む。職員のスマートフォンを活用し、患者との会話を文字起こししてSOAP形式で整理する。今泉氏は「Sの部分に関してはかなり改善しているし、聞き取りの能力もどんどん上がってきている」と高評価を与えている。初診患者や多彩な訴えを持つ患者の記録で効果を発揮している。
臨床研究支援では、データレイクハウスから直接データを抽出し、患者分布や統計解析を瞬時に実行できるシステムを構築。従来は医療システム部門への依頼と手作業での集計が必要だったが、電子カルテ上での問い合わせで即座に結果を得られるようになった。
ロボット支援手術では、ダヴィンチをはじめ3社6台のロボットを導入。シンガポール大学と約5,000キロの距離で遠隔手術を実施したところ、遅延時間107ミリ秒を記録し、高い精度を確認した。
さらに、順天堂大学と共同でHDAC(ヘルスデータアーキテクチャコンソーシアム)を設立したことも紹介した。慶應義塾大学の村井純教授をセンター長に迎え、全国共通の医療情報基盤の整備を目指す。今泉病院長は「一つのモデルとして、日本における医療DXを加速させるために、標準化された医療情報アーキテクチャを構築し、提案していきたい」と展望を語った。
医療介護経営CBnewsマネジメント
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