中小病院のIT-BCPを実践視点で考える
変革する医療現場を支えるDXのチカラ~座談会シリーズ~vol.7 PR

ネットワークインフラとITサービスを手掛ける「アライドテレシス」(東京都品川区)が提供する、医療現場で変革の旗手を担うキーパーソンと考える特別企画「変革する医療現場を支えるDXのチカラ~座談会シリーズ~」。Vol.7は、前回に引き続き医療現場の事業継続計画(BCP)をテーマに、独立行政法人広島県立病院機構県立安芸津病院放射線科兼医療情報管理室の守本京平氏と、人材や予算の制約が多い中小病院でも実践できる「IT-BCP」について考えました。
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■中小病院にこそ必要なIT-BCP
岡本氏 ここ数年、医療界はセキュリティーの話題が続いてきましたが、その中でIT-BCPというキーワードがこの1、2年で業界全体に浸透し始めたと感じます。現場におられる守本先生はどのように感じていますか。
守本氏 IT-BCPに「取り組まなければならない」という認識はあっても、実際に着手できている中小病院は多くないというのが率直な思いです。その大きな理由は、人材と予算の制約です。加えて、大規模病院の事例ばかりが紹介され、「自分たちには難しいのではないか」という心理的な壁が生まれているようです。中小病院の標準的な取り組みモデルが見えにくいことも、ハードルを高くしている一因でしょう。
IT-BCPを特別なものとして構える必要はないというのが私の考えです。多くの病院では、すでに災害BCPには取り組んでいます。その枠組みにITの要素を追加していく形で進めればいい。最初からすべてを整えようとすると負担が大きくなりますが、段階的に取り組めば、中小病院でも十分対応できます。
木村氏 小規模の病院の場合、コストと意識が課題になります。自院内に管理者がいない病院も多く、クリニックに至ってはさらに厳しい状況です。例えばサイバーセキュリティー関していえば、ランサムウェア攻撃はいつ起こるか分かりません。中小病院やクリニックでも地域の患者様に大きな影響を与える可能性があり、メーカーとしてその危機意識を訴えているところです。
■完璧を求めず段階的に進める
岡本氏 標準的なモデルがない中で、中小病院がIT-BCPを実際に進めていく上でのポイントについて伺いたいと思います。人材や予算が限られる中で、どこから手を付けるべきなのか、現場では悩みが多いテーマです。
守本氏 中小病院であっても、大規模病院であっても、やるべきこと自体は本質的に変わりません。違いがあるとすれば、関わる人の数と整理の仕方です。私が重視しているのは、IT-BCPを「情報部門だけの仕事」にしないことです。例えば、ネットワークにつながる機器は必ず担当部署を明確にし、その部署が責任をもって管理する。また、最初から完璧を目指さないことも重要です。危険度の高いところから順に解決していく。予算も一気にかけるのではなく、段階的に配分する。その積み重ねで、結果的にIT-BCPが形になります。
佐々木氏 現場でお話を伺うと、「どこまで情報部門が見るべきなのか分からない」という声は多いです。ネットワークはネットワーク、部門システムは部門システムと切り分け、それぞれの責任範囲を整理することが重要だと感じています。特に中小病院では、限られた人員で全体を把握するのは難しいため、役割分担が明確になるだけでも前進だと思います。
守本氏 例えば、ネットワークにつながる機器は必ず事前に情報部門を通す、といった最低限のルールを決めるだけでも、リスクは大きく下げられます。中小病院だからこそ、知恵を使って進めることが必要だと思います。
■IT-BCPは経営判断の課題
岡本氏 IT-BCPを実際に進める段階になると、最終的にはトップや経営層の理解と判断が欠かせません。ネットワークは目に見えにくく、成果も分かりにくい分野ですが、経営層の理解についてどのように考えていますか。
守本氏 「ITの話」として説明しないことはかなり大事だと思っています。ITネットワークは診療を支える基盤であり、ITネットワークが止まれば病院機能そのものが止まる。そのリスクをどう管理するのかという、経営の問題です。当院では、限られた予算の中で何を守るべきかを整理し、止まって困る部分から優先順位を付けて整備しました。高性能なものを揃える必要はなく、必要なところに必要な投資をするという考え方も訴えました。
また、止まったら困るというリスク管理だけでなく、職員がインフラの重要性を実感できる環境を整えることを意識しました。例えば院内でWi-Fiを使えるようにする。実際、私が着任した当初、ネットワークが使えないので自分のスマートフォンをテザリングできる設定にし、メールをチェックするといった状態でした。これを改善するだけで、職員はすぐに利便性を感じます。
その上で、「この環境はこうした基盤があって初めて成り立っている」と説明します。この時、特定の職員がインフラを使うことができる環境にするのではなく、職員全体が同じ基盤を使い、同じ恩恵を受けることが重要で、一部の役職者だけが特別扱いされるような形では実装は進みません。
木村氏 現場で見ていても、経営層がIT-BCPを「コスト」ではなく「止まらないための投資」と捉えている病院ほど、議論が前向きに進むと感じます。トップの理解があると、現場との意思疎通もスムーズになります。メーカーの立場からも、経営層が関心を持って関わっている病院ほど、結果的に無理のない形でIT-BCPが実装されている印象があります。
■スーパーマンより調整役を
岡本氏 医療情報の管理を担う人材はどのように育ててこられたのでしょうか。
守本氏 IT-BCPに限らず、医療情報の分野で私が一番重視しているのは、「すべてを分かるスーパーマン」をつくらないことです。実際、中小病院にそんな人材はいません。必要なのは、各部門に最低限分かる人を配置し、その人たちをつないでいくことです。私は各部署から一人ずつ、話ができて、周囲と調整できる人材を選びました。さらに言うと、いわゆるパソコンが得意な人よりも、現場の業務を理解し、意見をまとめられる人の方が重要だと考えています。ITの高度な知識は、外部のプロに任せればいい。院内に求められるのは、「どう使いたいのか」「誰が何に困っているのか」を言語化できる人材です。そのために、医療情報の基礎を学び、全体像を理解することが大切だと思っています。
佐々木氏 院内にそうした調整役がいる病院は、非常に話が進めやすいです。すべての技術を理解していなくても、現場の要望を整理して伝えていただけるだけで、適切な提案がしやすくなります。
■IT-BCPを日常業務に組み込む
守本氏 「100床規模病院のモデルケース」を、としていたのには根拠があります。日本の病院の大半は400床以下です。400床ぐらいまでなら、もともと150床規模だった当院のネットワークを基本ラインとして十分活用できるのです。また、広げていくために意識したのが、難しい話をしないことです。難しい話になると途端に中小病院は手を出せなくなってしまいます。だから、できることから始める。まず資産が管理されているか、ネットワーク利用機器が把握されているか。そこから段階的に上げていくしかありません。御社が開催しているユーザー会の場に出てきてもらえれば相談にも乗れますので、悩みがある方はぜひ参加して頂きたいですね。
岡本氏 安芸津病院様のネットワーク強化・活用に関する事例を弊社HPで公開しています。そうした現場での実践を踏まえて、最後に、中小病院でも継続的にBCP計画に取り組むためのポイントを教えていただけますか。
守本氏 IT-BCPを「一度作って終わりの計画」にしないことが何より重要だと思います。サイバー攻撃の手法も、院内の業務環境も常に変わります。ですから、完璧な形を目指すよりも、定期的に見直し、少しずつ更新していくことが現実的です。訓練や点検を通じて、院内のどこが弱いのかを把握し、その都度修正していく。その積み重ねがIT-BCPになります。
IT-BCPは情報部門だけの取り組みではありません。診療部門、看護部門、事務部門がそれぞれ自分たちの役割を理解し、責任を持つことが大切です。中小病院だからこそ、顔が見える関係の中で横断的に連携しやすいという強みもあります。IT-BCPは特別な取り組みではなく、日常業務の延長線上にあるものです。その意識を共有することが一番のポイントです。

▽本座談会のもととなったセミナーをアーカイブ配信中。
下記アライドテレシスHPよりお申込みのうえ、ご視聴いただけます。
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