東京都医学総合研究所などの研究グループは、思春期にいじめを受けた経験がその後の抑うつ症状や精神病体験につながる過程で「糖化ストレス」(ペントシジン)が関与している可能性があることを明らかにしたと発表した。思春期の深刻な社会ストレスであるいじめが、その後の心の不調につながるメカニズムの一端を示したもので、思春期の心の健康を理解して精神疾患の予防につなげる上で重要な知見だとしている。
思春期のいじめ被害は、その後の人生で心身の健康への深刻かつ長期的な悪影響を及ぼすとされているが、どのような仕組みで心の不調につながるかは十分に解明されていなかった。
近年では、慢性的なストレスが体内で炎症や代謝の変化を引き起こし、心身の健康に影響を及ぼす可能性が指摘されている。その1つが、糖とタンパク質や脂質などが反応して生じる「終末糖化産物」(AGEs)で、ペントシジンは代表的なAGEとされている。
研究グループは、思春期の子どもたちを対象とした大規模コホート研究の参加者を対象に研究を実施。参加者の▽12歳時点のいじめ被害の経験▽14歳時点の尿中ペントシジン濃度▽16歳時点での抑うつ症状や精神病体験といった心の不調-に関するデータを用いて、いじめ被害とその後の心の不調との関連においてペントシジンがどの程度、そのつながりを説明できるのか検証した。
その結果、いじめ被害を経験した子どもでは、経験後にペントシジン濃度が高くなったほか、ペントシジン濃度の上昇が抑うつ症状や精神病体験の増加と関連していることが分かった。
さらに解析を行うと、いじめ被害と精神症状との関連のうち、抑うつ症状は約19%、精神病体験は約28%がペントシジンを介して説明される可能性が示された。男女別に解析しても同様の結果が得られ、これらの関連は性別に限定されないことも確認された。
思春期は心身が大きく変化する時期であり、この時期のいじめ被害を防ぐことは将来の心の健康を育む上で重要となる。
研究グループは、「いじめ被害を経験した場合であってもペントシジンのような生物学的指標を活用することで、その後の心の不調リスクを早期に把握し、より効果的な予防や支援につなげられる可能性が期待される」としている。
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