【社会福祉法人聖隷福祉事業団 平川健二理事】
静岡県を拠点に、「エデンの園」というブランドの有料老人ホームを計8施設経営しています。8施設のうち6施設は自立型、2施設は介護型です。自立型は初めのうちは安心・快適な住まいとして、最後は看取りの場として、利用者の生活を支えています。介護型は同じ敷地内にある自立型からの住み替え先の施設が1つ、近隣の急性期病院との連携を重視する横浜の施設がもう1つです。
■医療連携体制を充実させる
自立型施設は介護型居室が50強ほど、自立型居室が350ほどです。いずれにおいても医療やリハビリへの取り組みに注力しています。2カ所のホームは有床診療所併設で、24時間ドクターが常駐しています。他も2カ所が無床診療所併設、4カ所がグループの病院や別法人の医療機関と連携体制を築くなど、医療体制を充実させています。医療連携のなかで大切にしているのが健康管理です。定期的な健康診断で蓄積したデータを生かすことで、予防も含めた医療・介護サービスを個人に合わせて提供することができます。個別リハビリに関しても、医療・介護保険適用外のサービスも含めて法人全体で管理して、リハビリのスタッフがいない状況を作らないようにしています。
介護の人員配置基準は「3対1」ですが、ここは「1.6対1」と手厚くしています。その分、介護保険で賄えないところは上乗せの保険料を頂戴しています。経営的には「1.8対1」くらいにしたいのが本音ですが、現場からは現状でも大変だという声があります。
■業務を一律化し、働きやすさを追求
介護業界全般で人手不足が課題となっていますが、当法人は定着率が良く、人材不足はそこまで感じていません。人材定着は給料だけで決まるのではなく、環境面も含めた平均値が大切だと思います。重視するのは働きやすさで、具体的には業務の標準化に力を入れています。属人化せず、誰がやっても同じ成果が出せるよう業務を標準化するようにしています。そのために、2年ほど前から、スマホで見られる動画マニュアルを取り入れています。テレビか雑誌で、製造業の現場で動画マニュアルが活用されているのを知りまして、それが介護の現場でも応用できないかと導入してみると、介護機器の操作方法や利用者の介護上の留意点を共有でき、職員による介護のムラが減少しました。
やはり、紙のマニュアルは読まれづらいですが、動画であれば抵抗なく見られます。また動画の作成は現場で行うため、動画内容は適切なのか現場で話し合って決めていくプロセスが良いと思います。今では、介護現場だけではなく事務室や厨房でも導入し、職員約100名の施設で20アカウントほど保持しています。
■海外からの人材は定着を重視
日本人以外の採用については、20年ほど前に、フィリピンから年間約10名のEPA(経済連携協定)候補者を受け入れたのが始まりです。それから人事に専門部署を設けて、受け入れの基盤づくりやノウハウの蓄積を図りました。大量に受け入れるというよりは、日本で生活できるイメージのつく方を法人全体で年間20名弱受け入れ、2-4年トレーニングしています。
EPAの目的である国家資格取得のためにも、その土台となる日本語や基本介護プログラム支援から力を入れています。年齢や経歴に関係なく、より働きやすい職場にするため、今後はDX化を重視していきたいです。その上で、処遇改善に加えて、基本報酬を見直してもらえれば、新たな投資もできるので大変ありがたいです。
【聞き手/構成・吉村惇】
【取材を終えて】
一番に感じたのは、特色を大切にした経営だということだ。強みである医療体制が、平川氏がこだわりに挙げる利用者の安心・安全につながっている。医療と介護が分断されない、地域社会一体で支えるセーフティネットがあればこそ、長期にわたり高齢者に寄り添うことができる。予防を含めた個人に合ったケア体制と、個人の健康意識こそが、社会保障負担の減少に寄与するとすれば、今回のようなケア体制の普及はこれからの日本にとって大変有益であるはずだ。
少子高齢化に直面している日本社会。医療・介護連携による、長期的なサポートの重要性を聖隷福祉事業団の取り組みに見た気がした。
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