病院の枠を飛び出した医師、その理由は?
講師がセミナー前にメッセージ
折居麻綾さんが、岩手医大卒業後、慶大病院脳神経外科に入局して、10年が経ったころだった。
全国にある関連病院にかわるがわる派遣されて、キャリアを積んでいく中で、「猪突猛進、ひたすら脳外科医になるために頑張っていたのですが、このままの先の死ぬ瞬間が見えておもしろくない」と、ふと思ったという。「生きていくことの根本の基準が“おもしろいか、おもしろくないか”、これで人生の進み方を決めている」ー。こう言い切る折居さんは、当時のことを振り返る。
「仕事に疲れてJR山手線に乗って、2周は回ったと思います。その時、芸術で海外留学を目指す専門学校のオープンキャンパスのポスターを見つけて、脳外科医でファッションをやるのは世界でも珍しいのではないか、おもしろいかもと思いました」
折居さんは以前から、デザインやファッションに興味があり、慶大主幹の学会のポスターの作製を手伝ったり、先輩医師や看護師の送別会のために、記念バッグやTシャツを作ったりしていた。またインパクトファクターのある学術論文には身体部位の「絵」(シェーマ)を掲載する必要があるため、後輩などに頼まれて絵を描いたりもしていた。
折居さんは翌年、専門学校に入り、仕事をしながら勉強を続け、1年後にはロンドン留学を決めた。
慶大病院脳神経外科に入局するきっかけになった教授(当時)で、世界的な脳神経外科の権威の河瀬斌さんに相談したが、「折居くんなら、脳外科医としてやっていけるのに、なぜだ」と猛反対された。しかし、折居さんは「やりたいと思ったときにやらないと後悔する」と考え、ファッションの世界に本格的に足を踏み入れることを決めた。
河瀬さんは、芸術に理解があり、脳外科の教科書などに河瀬さんの描いた絵が掲載されていたりもしている。河瀬さんは最後には、折居さんの気持ちをくんでくれて、ロンドン留学も認めてくれた。河瀬さんなどの温情により、折居さんは慶大病院を「破門」になることもなく、今もなお、慶大病院とはつきあいを続け、関連病院系列のクリニックに勤務している。
■2つのことをバランスよくやったり、人それぞれだと思う
折居さんに、二足のわらじは難しくないのかや、医師とデザイナーの切り替えをどのようにしているのかを聞くと、「極めるのが得意という人もいれば、私のように2つのことをバランスよくやるというのもあって、人それぞれだと思います。特に、切り替えのスイッチはありません。デザイナーをやることで、医師という仕事が前に進むような気がします」と答えた。
折居さんは毎年1回、個展を開くのが目下の目標。今年からは、自身がデザインした洋服の販売も開始している。少しずつだが売れているという。ただ、それも冷静に見ている。
「街で自分がデザインした服を着ている人を見かけることがあれば、うれしいでしょうが、今はまだ私のパーソナリティーに興味があって服を買ってくれているのだと思います。次の段階の目標は、私の作品が好きで買ってくれる人を増やしていくことです。ファッション業界から、一目置かれる存在になりたいですね」
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