医師の宿直義務を規定する医療法第16条では、「宿直医の院内常駐」が原則とされ、入院患者が急変した場合に医師が病院からの連絡を常時受けられるなど「速やかに診療を行う体制」が確保されているなどの条件をクリアする場合に限り、例外が認められている。ただ、この例外では宿直の兼務は想定していない。
厚生労働省は、人口の急激な減少や医師の働き方改革に対応するため、宿直体制について、より合理的な対応を検討する方針を示した。
規制改革推進会議の健康・医療・介護WG はこの日、病院の機能を維持するための宿直体制の見直しを議論し、医療関係者からヒアリングを行った。
医療法人谷田会谷田病院(熊本県甲佐町)の谷田理一郎理事長・院長はその中で、医師の確保が困難な地域の病院では、宿直医を確保するため日中に診療体制を縮小するなどの影響が生じていることを指摘した。
その上で、▽近くの医療機関と協力体制を整備▽カルテを遠隔で閲覧するなどICT機器を活用▽緊急搬送先を確保-することを条件に、4病院の宿直を医師2人が遠隔で兼務できるようにするなどルールの見直しの検討を求めた。
谷田氏は、患者の状態が比較的安定している慢性期の病院では、緊急搬送の判断など医師が遠隔で対応できる範囲が大きくなるとして、オンコールの活用も主張した。
WGの大石佳能子専門委員(メディヴァ社長)らも、医療人材の不足や偏在が深刻で医療提供体制を維持するのが困難な地域で医師がICTを活用して宿直を兼務できるようにするなど、条件付きでのルールの見直しを検討するよう求めた。
これに対して厚労省は、人口の急激な減少や医師の働き方改革に対応するため、医師の宿直の体制について、「より合理的な方法を模索することは当然のオプションだ」との認識を示した。
その上で、宿直の体制を見直すとしたらどのような病院を対象にするのかや、医師が患者の急変時に駆け付けるのに必要な対応のほか、複数の病院の宿直を医師が兼務する場合の病院ごとの責任の所在などが論点になると指摘した。
WG側は、医師の確保が一層困難になる中、宿直体制の見直しは「待ったなしの状況だ」(大石専門委員)として、医療現場の意見を聴いた上で期限を定めて早急に検討するよう厚労省に求めた。
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