【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
DPC/PDPSは入院期間によって点数が異なる仕組みであり、在院日数を延長すれば入院診療単価は下落していく。これはDPC/PDPSに限ったことではなく、治療終了後に病床稼働率を重視して入院を長引かせれば診療報酬は逓減していく。
一方で、空床になれば収入はゼロになるわけだから、次の患者が来ない限り、特に週末など稼働率が下落しがちなタイミングでトップから「在院日数を延長せよ」という指令が下ることもある。平均在院日数と病床稼働率のバランスを取ろうと、特にコロナ後に入院患者数が減少している病院においては在院日数の調整が行われているかもしれない。
在院日数を延ばせば、稼働率は繕えるかもしれないが、機能評価係数IIにおける効率性係数は下落し、「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)も基準値を満たすことができなくなるかもしれない。ただ、稼働率の低下をできるだけ防いだバランスの良い在院日数というものが存在すると主張されることもある。本稿では、整形外科手術の事例を用いて、入院期間と看護必要度についてどう考えるかを改めて問い、その実態に迫っていく。
■損益分岐点をどう考えるか
資料1は、「股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む) 人工関節再置換術等(DPC:07040xxx01xxxx)」の点数設定だ。2024年度診療報酬改定で点数は微増しているが、全国平均の在院日数である入院期間IIは設定が1日短くなっている。さらに、30の整数倍で設定される入院期間IIIは、60日だったものが、30日まで短縮されている。
急性期一般入院料1を届け出るいわゆる7対1病院の医療機関別係数の平均がおよそ1.5弱なので、その係数を掛け合わせた試算をこの後に行う。
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次回配信は8月上旬を予定しています
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