国立長寿医療研究センターは、認知的フレイルの診断に有効な血中バイオマーカー候補を発見したと明らかにした。病態メカニズムの理解や食事療法も含めた治療介入への応用が期待できるとしている。
認知的フレイルは、加齢に伴う筋肉量・筋力の低下を中心とした身体的虚弱(フレイル)と、軽度認知機能障害が併存する状態。早期診断や早期介入により改善が期待されるが、血液による客観的な診断法は確立されていなかった。
同センター研究所と広島大大学院の研究グループは、認知的フレイルの患者43人と健常な高齢者44人から採取した血液を用いて臨床データや網羅的遺伝子発現データ(RNAシークエンス)などを統合した解析を行った。
その結果、「GDF15」「BDNF」「アディポネクチン」「ミリスチン酸」「ニコチンアミド」「γ-ブチロベタイン」の計6種類の血中バイオマーカー候補を新たに同定。さらに、機械学習アルゴリズムのランダムフォレストという手法で解析したところ、特に「GDF15」「ミリスチン酸」「ニコチンアミド」の3つが認知的フレイルの診断に有用であることが分かった。これら3つは、フレイル診断基準のJ-CHSスコアや認知症の評価指標(MMSE-J、MoCA-J)とも強い相関を示した。
中でも、「ミリスチン酸」は最も高い重要度指数(ジニ係数)を示し、診断マーカーとしての有用性が示唆された。栄養素として補充可能であるため、将来的な治療介入への応用も期待されるという。
同センターは今回の研究結果について、「認知的フレイルを対象とした統合的アプローチにより得られた新たな知見であり、早期診断・早期介入の実現に向けた大きな一歩になる」としている。
【関連記事】


