【株式会社 太陽メディケアサービス 小林和徳 代表取締役社長
(一般社団法人 全国定期巡回・随時対応型訪問介護看護協議会 理事)】
全国規模でない事業所は、地元人材に認知され愛されていかないと未来はないと思っています。「ケアする人をケアしていく」という考えを中心に据えて、たとえば生産性向上もコストカット云々から始めるのではなく、新しい仕組みや工夫を加えることで推進しました。そのなかで最も効果的だったのが、「サポーター制度」です。手前味噌になりますが、国からも表彰されました。
この制度は、介護施設の労働は忙しさのピークに波がある点に注目して生まれました。ピークタイムには人手不足や過酷な労働環境への声が聞かれる一方で、ピークタイムではない比較的暇な時間については、認識されてもあまり語られませんでした。
そこでオフピークの人事管理に焦点を当てて導入したのが、2時間という短い時間からでも働けるサポーターの仕組みです。人を減らすというよりも、必要なところに必要な人を「加える」という観点でいくと、いわゆる選択と集中が適切に働き、マンパワーは必要なところにいて、時短労働で雇用するので人件費の面でも良いという状況が作れると思います。コストの整理ができたことで、施設全体としては、人件費率が5割を切りました。一般的な介護施設では6割後半くらいでしょうから、サポーター制度の影響が大きいと感じています。
働く側からしても、メリットが大きいと思います。介護士は基本給が12%から20%向上しました。一方、サポーターは、好きな日時に短時間から働けるため、ライフスタイルを阻害されることがありません。子育て世代、シニア世代、高校生をはじめとした学生、引きこもりやニートだった方に主に来ていただいています。例えば、夕食時のサポートは学生が多いのですが、配膳や下膳、食事量のチェック等をして3,000円というのは効率が良く、しかも介護施設で働いた経験は就職面接の際に評価されるという声が聞かれ、私としても嬉しい限りです。
■自己実現の場として、多様なメディア展開
「ケアする人をケアしていく」と謳う以上、職員の自己実現は欠かせません。人間関係など感情の整理や、プライベートについては会社が担保できません。会社が提供できるのは、仕事のなかに非日常体験を盛り込むことかなと考え、インスタグラムやYouTube等の発信活動に力を入れてきました。さらに4月からは地元のFM長岡で毎週ラジオ番組を放送しています。ラジオは最初、私一人で行っていたのですが、構成や企画を募集したら職員に手を挙げる人が複数いて、しめたと思いました。
当たり前の仕事を確保しながら、非日常体験を作ることは結構大事です。やっていくなかで、デジタルの表現力があるなど、社員の強みを生かせることがあります。強みの発見は広報活動だけにとどまらず、たとえばコンプライアンスの道を行く看護師や営業が得意な相談員など、プラスアルファの能力を発揮できる人は結構います。
■マネージャーの育成が業界の課題
異業種から入った身からすると、業界的に職員の個性を引き出すようなマネジメント能力の不足が課題だと思いました。プレーヤー不足もそうですが、それ以上にマネージャー不足が深刻です。国家資格に応じた能力の発揮を前提に、マネジメント能力のある人を育成しないと産業的に地盤沈下を起こすのではと危惧しています。
また、専門職だという理由だけで、年収を固定的に上げるとしっぺ返しがくると思います。たとえば、一口にケアマネと言っても、力量やキャパシティの差は採用時には分かりません。全員に高い給料を設定するよりも、介護系の専門職に従事してもらいつつ、兼任兼務で運営そのものにタッチしてもらう人には、その分年収を上げる方針を採っています。施設や会社経営を理解できないまま消去法で管理職に選ばれると現場が大変ですから、管理職育成は重要です。
【聞き手/構成・吉村惇】
【取材を終えて】
有料老人ホームで、2024年度は厚生労働大臣表彰優良賞、25と26年度は同奨励賞とその両方を3年連続受賞しているのは、全国でもここしかない。厚生労働大臣表彰を含めた法人に限ると、ここだけだ。1時間という取材時間のなかで、何度も頷きたくなる部分やハッとさせられた部分があり、表彰されるのも納得だという感じがした。かつては声優を目指していたという小林代表の柔らかくも説得力のある語り口に、日本の介護には未来があると期待感を胸に抱いた。
異業種出身ならではのシャープな視線で、テクノロジーの活用に加えて、組織マネジメントを含めた人間力の育成が大切だと、この業界の伸び代を指摘する。職員以外にも、地元高専の学生と研修用アプリを共同開発するなど幅広く地域の人材を見つめ、人を大切にする姿勢にこそ、地元に寄り添う介護の未来像が見える気がした。待遇だけではなく、仕事を切り分けて職員にやりがいを見出すなど、真の生産性向上の姿がそこにはある。
【関連記事】


