脱サラし、医師になったから分かること
あの時、私はこう考えた(1)
ある日、田村が病棟巡回をしていると、清水を見掛けた。外来で担当していた、脳梗塞で入院している男性患者に肩を貸し、廊下の手すりを伝うリハビリテーションを手伝っていた。田村は、「そのクラスの医師になると、どんどん若い医師に主治医を振って、自分は時々回診するくらいだが、清水先生は違った」と話す。 そして、その光景を見ながら、田村はこう思った。「その患者さんがリハビリに一生懸命だったのは、清水先生に、『私は、ここまで回復しましたよ』と見せたかったのではないか」。 清水は現在、大和青洲病院(神奈川県大和市)の院長を務めながら、救急患者への対応も続けている。田村は、今でも交流を続け、節目にはあいさつをしに訪れる。清水の背中を追うように、田村も医療法人の運営や医師会の業務をしながら、今でも診療の現場に出続けている。2011年の東日本大震災では自身がリーダーとなり、医療チームを率いて現地で診療に当たった。 ■「めぐみ会の医師には、在宅と共に外来も続けてもらう」 国は、25年に団塊世代が後期高齢者になるまでに、病院完結型医療から地域完結型医療への転換を図ろうとしている。診療報酬も、外来機能の分化を推進し、かかりつけ医を評価する方向にかじを切っている。しかし、社会の高齢化に伴い在宅医療の担い手が求められているが、必要な医師数確保のめどは立っていない。 高齢化は多摩市も例外ではない。めぐみ会も地域医療を担うために、在宅に注力している。田村自身も田村クリニックの開業時から、在宅を柱の一つにし、地域医療を守る責任感から、土日開業も打ち出してきた。 田村クリニックを中核とするめぐみ会は、同市を中心に10のクリニックと4つの健診施設などを展開する。めぐみ会では、在宅医療に理解や熱意がある医師が、十分に力を発揮できるよう、外来診療をしながら訪問診療ができる体制を築いている。
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