在宅医療で薬局経営に活路
事業譲渡で「仕事の幅広がる」
■顔の見える担当者への相談が転機に
わに薬局は地域の住民から親しまれ、経営も順調に推移していたが、塩飽は今年7月、全国で調剤薬局などを展開する「メディカルシステムネットワーク」(札幌市)に対し、すべての株式を譲渡することを決断する。
最大の理由は人手不足。塩飽はこれまで培ったノウハウを生かし、「地域に根差した薬局を広めたい」と考えていたが、薬剤師の確保に頭を抱えていた。東京でM&Aセミナーに参加するなど、薬局の方向性を模索する中、人材紹介で付き合いのあったキャリアブレインの担当者への相談がきっかけとなり、同社のM&A支援サービスの利用を決めたという。
「一方的に送られるダイレクトメール(DM)とは違って、キャリアブレインの担当者とは顔の見える関係ができていた。これまでの付き合いの延長で、自然な形でビジネスにつなげることができた」。塩飽はこう振り返る。
譲渡先との交渉の際は、相手の在宅医療への思いを何度も確かめ、自身の考えに最も近いメディカルシステムネットワークの傘下に入った。そして今も、メディカルブレーンの社長として、わに薬局の経営に携わっている。これまでのノウハウに資金力が加わったことで、「仕事の幅が広がった」という。
「地域包括ケアの中で薬局ができることはまだある。譲渡後も経営者としての立場は変わらず、やりたいことを自由にやらせてもらっている」。こう話す横顔からは、日々の充実ぶりが伝わってくる。
■目指す薬局は“おいしいラーメン屋”
塩飽が理想とする薬局は立地ではなく、サービスの中身で評価される“おいしいラーメン屋さん”。
メディカルブレーンでは、車いすやベッドなど福祉用具のレンタル、居宅介護支援事業所の運営、LED照明や水道バルブといった環境に優しい器具の販売など、幅広い事業を展開している。
「病院やクリニックの前で処方せんを受け取るだけの薬局は、これから生き残っていけない。さまざまなサービスを提供し、地域で選ばれる薬局に変わる必要がある」―。在宅医療の極みを目指し、塩飽の挑戦は続く。
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