4月の介護報酬改定では、ほぼすべてのサービスで基本報酬が削られる。各事業者は、これまで以上の経営努力を求められることになるが、介護事業経営研究会の最高顧問である小濱道博氏は、「規模が小さな事業所、とりわけ通所介護や訪問介護の小規模事業所は、特に厳しい状況に置かれるでしょう」と警鐘を鳴らす。4月の改定に向け、今、各事業所がやるべきことは何か。そして改定後、各事業所が取るべき戦術は―。小濱氏に聞いた。【ただ正芳、丸山紀一朗】
厚生労働省は、2015年度の介護報酬改定の基本方針の一つとして「中重度の要介護者や認知症高齢者への対応の更なる強化」を掲げ、認知症や重度者対応をテーマとした加算を、さまざまなサービスに設ける。その結果、特別養護老人ホームや通所介護のように、基本報酬が大きく削減されるサービスであっても、新たな加算を積み重ねれば、改定前の報酬水準を上回ることも、理論上は可能となる=グラフ1、2=。
■「加算積み重ねで報酬アップ」、理論上は可能だが…
まず、はっきりさせておきたいのは、こうした試算は、「理論上はそういうことも可能」というだけのものであることだ。もちろん、試算通りの取り組みが可能な事業所がないわけではない。例えば、さまざまなサービスを全国展開する法人が運営する事業所であれば、このやり方で、報酬を増やすこともできるだろう。
その一方で、小規模事業所の多くにとって前述の試算は、現段階ではあくまで「理論上のオハナシ」にすぎない。
その理由は、加算の多くが新たな人員配置を求める内容となっているためだ。規模が大きな法人に所属する施設や事業所なら、同じ法人の他の施設などと人をやりくりすることで加算の要件を満たすことができる。しかし、小規模事業所では、そうはいかない。要件を満たすためには、新たに人を雇わねばならないだろう。これでは、たとえ加算を算定できたとしても、人件費も跳ね上がってしまう。下手をすれば、加算のせいで、逆に収支は悪化することだってあり得る。
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