【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2008年度の診療報酬改定で退院調整加算が評価され、その後、16年度改定で退院支援加算に改められた。入院患者の退院後の生活を支援するために、入院後早期から看護師や社会福祉士が介入することへの評価である。さらに、18年度には現在の入退院支援加算に名称が変更され、入院時支援加算も新設された。退院困難になることが予期される予定入院の患者に対し、事前の説明や持参薬の確認、栄養状態の評価などを外来から行うことを促している。
入退院支援加算に名称変更された際、入院前からの支援も含む評価として位置付けも変わった。いずれも、患者が住み慣れた地域で安心して社会生活を送れるようにという診療報酬上の配慮だ。
■入院期間の短縮に効果
資料1は、20年度の改定を議論した際の資料だ。入退院支援加算の届け出の有無による平均在院日数の差異を見たもので、入退院支援加算1の届け出がある医療機関で平均在院日数が短いことが分かる。中央社会保険医療協議会の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」が26年度改定に向けて議論を始めた際の資料でも入院時支援加算の届け出の有無によって平均在院日数に違いがあることが明らかになっている=資料2=。
つまり、入退院支援に重点的に人員配置を行い、積極的に介入することが在院日数の短縮につながり、望ましいことを意味している。今後も入退院支援は重要であり、積極的に介入すべき領域だと考える。しかしながら、16年度改定で退院支援加算が初めて評価されてから10年が経過しようとしている今、この加算についていま一度、立ち止まって冷静に考えるべきではないかとも感じている。
本稿では、入退院支援加算の実態を明らかにした上で、その在り方について私見を交えて言及する。

グラフ1は入退院支援加算の算定件数と算定額の推移を見たもので、一貫して増大している(入院時支援加算は除いている)。23年度にはこの加算に対して約360億円を投じていることになるが、仮に3週間超えの入院患者の入院医療費が1日3万円程度だとすると、その患者が120万人減少すればコストパフォーマンスは悪くないことになる。自民・公明両党と日本維新の会の合意に盛り込まれた病院病床を11万床減少し、その在院日数が10日であるという計算と、たまたまだが近しい値になってしまう。
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