抗凝固薬処方の後期高齢者、脳出血の入院リスク1.6倍
「処方なし」と比べ 都健康長寿医療センター
東京都健康長寿医療センターは、抗凝固薬を処方された75歳以上の後期高齢者では処方されていない場合と比べ脳出血による入院の発生リスクが約1.6倍高いとする研究結果を明らかにした。高齢者(特に75歳以上)に抗凝固薬の治療を行う際には、大出血のリスクを考慮して薬剤を慎重に選ぶとともに、投与時にはモニタリングを定期的に行う必要があるとしている。
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研究は、同センターの「福祉と生活ケア研究チーム」の平田匠研究部長のグループによるもので、北海道に住む75歳以上の高齢者13万2,516人分のレセプト(診療情報明細書)情報を分析した。
その結果、2017年4月-19年3月の2年間で、抗凝固薬の処方があった後期高齢者は処方がなかった後期高齢者と比べ脳出血による入院の発生リスクが約1.6倍高かった。
グループは、従来型の抗凝固薬であるワルファリンと、新しいタイプの直接経口抗凝固薬(DOACs)のそれぞれを処方した場合の脳出血による入院の発生率も比較した。1種類の抗凝固薬を処方された6万1,556人から選出した3万9,426人を対象に分析したところ、ワルファリンの処方者の方が入院の発生リスクが約1.7倍高いことも分かった。
抗凝固薬の処方を巡っては、心房細動などに伴う脳梗塞の発症予防に有益である一方、高齢者では脳出血などの大出血リスクを高めてしまうことが報告されている。ただ、抗凝固薬が後期高齢者の脳出血の発生リスクをどれほど高めるのかや、抗凝固薬の種類により発生リスクが異なるのかといった検討は十分に行われていなかったという。
同センターは今回の研究について、「国内の後期高齢者を対象とした大規模データで抗凝固薬の脳出血リスクを初めて示すことができ、その科学的根拠を強めることができた」としている。研究成果は国際科学雑誌「Aging Clinical and Experimental Research」に掲載された。
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