■ 三菱総合研究所
医療・介護DX本部 政策企画グループリーダー
(併任)政策・経済センター 政策研究グループ 主席研究員
前田 克実
第1回では、介護保険制度が四半世紀余りをかけて介護を社会で支える仕組みへ広げてきた一方で、介護経営を取り巻く前提が変わりつつあることを確認した。第2回では、その前提の中でも最も基礎にある人口構造を取り上げる。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によれば、出生中位・死亡中位推計で、総人口は2020年の1億2,615万人から2070年には8,700万人へ減少する。一方、65歳以上人口の割合は28.6%から38.7%へ上昇し、65歳以上人口そのものは2043年に3,953万人でピークを迎えると推計されている。この数字だけを見ると、介護需要も2040年代前半に山を越えるように見えるかもしれない。しかし、介護経営の視点では、もう一段深く見ていきたい。
まず、介護需要は高齢者の中でもより高齢な年齢層で高まることを考慮する必要がある。厚生労働省資料では、要介護認定率(要支援1・2を含む)は年齢とともに高まり、2024年時点で85歳以上全体の認定率は58.2%、90歳以上では73.0%と示されている。認定率だけでなく、認知症や看取り、高齢者のみの世帯への支援など複合的なニーズが高まることが見込まれる85歳以上人口は、一時的な減少を挟みつつ2060年代にかけて増加傾向が続くことが推計されている。介護保険制度を支えるインフラとして地域のサービスの持続的確保を期待される法人であることを考慮すれば、介護経営の視点では、2070年を見据えて介護需要を捉えることが重要である。
また、介護需要の変化が全国一律ではないことも重要である。国立社会保障・人口問題研究所の地域別将来推計人口は、2020年国勢調査を基に、2050年までの都道府県別・市区町村別人口を推計している。同研究所の公表資料では、2050年の総人口が2020年と比べて30%以上減少する県が11県ある一方で、65歳以上人口割合が40%を超える道県は25に上るとされている。また、65歳以上人口が総人口の半数以上を占める市区町村は、2020年の59から2050年には557へ増えると見込まれている。人口減少地域、特に、いわゆる中山間地域などでは、高齢者の居住地が分散し、サービスへのアクセスを維持することが困難になり始めている。
厚生労働省の資料でも、2050年までの介護サービス利用者数を保険者別に推計すると、すでにピークを過ぎて減少に転じた保険者がある一方、都市部を中心に2040年以降まで増え続ける保険者が多いと整理されている。同じ「高齢化」でも、都市部では介護需要の伸びにどう応えるかが問われ、人口減少地域では、利用者が分散する中で必要なサービスをどう維持するかが問われるのである。
さらに、介護需要を考えるときには、同時に支え手の人口も見なければならない。厚生労働省資料では、2040年には85歳以上人口を中心とした高齢化と生産年齢人口の減少が見られ、地域ごとに見ても、ほぼ全ての地域で生産年齢人口が減少するとされている。介護保険制度は、高齢化による介護需要の増加と、供給側の担い手減少が同時に進行する局面に移行し始めているのである。
2070年を見据えるとは、遠い将来を漠然と心配することではなく、これからの採用や人材育成、経営の在り方を、人口構造の変化に照らして考え直すことである。次回は、本稿でも言及した地域差をさらに掘り下げ、介護保険サービスの在り方をみなさんと一緒に考えていきたい。
介護経営に関わるさまざまな課題を未来に向けて深く考察する「介護経営論考」。シンクタンク5社(日本総合研究所・NTTデータ経営研究所・野村総合研究所・みずほ総合研究所・三菱総合研究所)がリレー形式で毎週論ずる。(次回配信は10月16日に日本総合研究所vol.3を予定)
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