昨年6月、塩崎恭久厚生労働相の指示で20年後の保健医療のあるべき姿を示した「保健医療2035」を取りまとめた懇談会のメンバーの一人である徳田安春・地域医療機能推進機構(JCHO)本部総合診療顧問と、同懇談会にアドバイザーとして参加した日本医師会(日医)の横倉義武会長の対談が実現。米国発のChoosing Wisely(賢く選択しよう)キャンペーンを日本で主導する徳田顧問と、「かかりつけ医」を推進する横倉会長が1年ぶりに再会した。【君塚靖】
【特集「Choosing Wisely」持続可能な医療のために】
Choosing Wiselyは医療肯定(2016/05/26)
医療現場のChoosing Wisely(2016/06/02)
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保健医療2035には「世界各国で急速に広がっているChoosing Wiselyの取り組み、すなわち検査や治療の選択において必要性を的確に吟味し、無駄を控えるように推奨するなどの専門医学会等による自律的な取り組みを進める」ことが盛り込まれたほか、かかりつけ医について、「身近な医師が患者の状態や価値観も踏まえて、適切な医療を円滑に受けられるようサポートする『ゲートオープナー』機能を確立する」と明記された。
対談は日医の会長室で行われた。徳田顧問は会長室に入るや否や、自身が編集に携わった書籍「日本の高価値医療(High Value Care in Japan)」を横倉会長に手渡した。横倉会長から、「いったい誰のためのValueですか」と尋ねられると、徳田顧問は何のためらいも見せずに「患者さんのValueです」と言い切った。
横倉会長 保健医療2035の懇談会は、40代前後のメンバーが中心でした。2035年に活躍する人が中心であったことはとてもよかったと思います。本来、長期的な政策立案・決定を、高齢の方が決めてしまってはいけません。その意味で懇談会メンバーの構成が素晴らしかったと思います。それに、よくある用意された資料を行政の担当者が説明するだけの役所の会議と、まったく違っていました。
保健医療2035に、かかりつけ医のゲートオープナー機能の確立が盛り込まれたのは評価しています。かかりつけ医は、健康を守るところから、お亡くなりになるところまで患者さんに寄り添うのが一番の役割です。医療に限らず患者さんの生き方までをカバーするのが、かかりつけ医です。それを推進するのがわれわれ日医なのだと考えています。
徳田顧問 懇談会では、まさしく将来の保健医療のあるべき姿について、ゼロからのブレインストーミングで議論を始めました。経験の浅い私たちが短期間で報告書をまとめられたのは、横倉会長をはじめとしたアドバイザーからの適切な指導や強いサポートがあったからだと思っています。しかも、報告書は世界的に有名な医学雑誌「ランセット」にも掲載されました。(下記リンク)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)61135-7/abstract Choosing Wiselyキャンペーンは、米国の内科専門医を認定する米国内科認証機構財団が12年に呼び掛けて始まったのですが、その底流には、プロフェッショナリズムがあります。このキャンペーンは一気に広がり、現在20カ国程度にまで広がっています。
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