【介護老人保健施設 クリアコート千歳・事務次長(北海道介護福祉道場 あかい花 代表)・菊地雅洋】
介護現場の人材不足は、深刻化の一途をたどっている。恐ろしいのは介護福祉士の養成校に人が集まらず、クラス数を減らしたり、募集停止に追い込まれたりする学校があることだ。人材育成する基盤そのものが揺らいでいるということで、まさに由々しき事態である。
さらに深刻なのは、少なくなった養成校の学生の中で、介護以外の企業に就職しようとする学生が、かなりの数に上るという事実だ。
その背景には、介護職員の待遇に不安を覚えた養成校の進路指導の教員が、学生に介護以外の進路を勧めているという要因がある。だが、それ以上に注目すべきは、人材不足で苦しみ、一人でも多くの仲間の参入を待ち望んでいるはずの介護現場の職員自身が、学生の意欲と動機を奪っているという問題だ。
■はじめての介護実習で「後ろ向き」に変化し始める学生たち
僕は介護福祉士養成校の非常勤講師もしているから、学生たちが就学期間中に変わっていく姿を目にすることがある。この変化には、おおよそ「前向き」と「後ろ向き」の二つの方向があるようだ。
このうち「前向き」とは、勉強と実習を通して介護の使命を実感し、頑張ってよい介護福祉士になろうという方向に意識が変わっていくことを意味する。一方、「後ろ向き」とは、介護の仕事にも介護福祉士の資格取得にも意欲を失い、他の職業への就職を目指し始めることをさす。
そして、学生が「後ろ向き」に変化し始めるきっかけの多くは、初めての介護実習だ。
(残り1987字 / 全2634字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】
【関連キーワード】