【株式会社スマイル・ガーデン 村尾孝子】
■接遇とは思いやりの心を可視化する方法
この数年で大きく変わってきた薬局薬剤師業務ですが、2016年度診療報酬改定では、“対物”から“対人”へ、かかりつけ薬局からかかりつけ薬剤師へ、といったように、変化はさらに加速しました。
患者さんの処方せんを薬局で待つだけの時代は終わり、薬剤師自らが積極的に患者さんや地域社会との接点を作り、活動の場を広げていく時代になったのです。そこで、患者さんや他職種など、多くの人々とのコミュニケーションにおいて重要になるのが接遇です。
接遇という言葉を聞いたことがない人はいないと思いますが、その意味をすぐに答えられる人はほとんどいません。なんとなくイメージできていても、いざ言葉にするのは難しいのです。
遇という字は“遇す(もてなす)”と読みます。思いやりの心をもって世話するという意味です。つまり接遇とは、「おもてなしの心を込めて相手に接すること」と言えるでしょう。では、“おもてなしの心”“思いやりの心”とは何でしょうか。「相手を思いやる」とは、相手の立場に立って、相手の考えや気持ちに思いを寄せることであり、相手に興味を持ち、関心を寄せることとも言えます。
医療の現場における接遇とは、患者さんや協働する他職種の人々が何をしたいのか、何をしてほしいと望んでいるのか、相手の痛みや苦しみを想像して、その思いに応えるために行動することです。そして、“おもてなしの心”“思いやりの心”を可視化する方法が礼儀(マナー)です。接遇の心は、ただ心の中で思っているだけでは相手に伝わりません。目に見えない「思い」を伝えるため、私たちは言葉遣いや表情・身だしなみといった“形”に尊敬や感謝の気持ちを表すのです。
薬局薬剤師の多くは、これまで接遇を意識せずとも、業務に支障が出ることはなかったでしょう。しかし今後は、活動の場が広がり、より多くの人々との接点が増えます。かかりつけ薬剤師制度の導入も加わって、接遇を意識せざるを得なくなる場面が増えるでしょう。
次回配信は2月16日5:00を予定しています
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