5月30日に行われた未来投資会議で政府が示した資料=図=には、「介護:科学的介護の導入による『自立支援の促進』」として、自立支援などの効果が科学的に裏付けられた介護の実現に向け、必要なデータを収集・分析するためのデータベースを構築し、2020 年度の本格運用開始を目指すことや、次期介護報酬改定において、効果のある自立支援について評価を行う方針が盛り込まれている。科学的に裏付けられた介護の具体例としては、例えば、次のような事柄を指すらしい。
「脳卒中に伴う左脚の麻痺により3メートルしか自力で歩行できない人が、杖を使って20メートル歩けるようになる」
未来投資会議の資料では、上記のような成果を得るにはどのようなサービスが有効か、国が科学的に分析し、提示すべきと言う。さらには介護報酬上の評価を用いて、科学的に効果が裏付けられたサービスを受けられる事業所を、厚生労働省のウェブサイトなどにおいて公表すべきとまで言う。
■「アウトカム=要介護度改善」は自立を矮小化する
しかし、本当に「科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護の具体像」を示すことは可能なのか?
医学的リハビリテーションエクササイズは、万人に等しい結果が表れるわけではない。それをどう標準化するのか、甚だ疑問である。また、「介護報酬改定における自立支援評価」とは、自立支援のアウトカムについて、加算報酬を導入するという意味だろう。もし、それが要介護度の改善という意味であれば、ずいぶん乱暴で、自立という概念を矮小化したものでしかないといえる。
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