財務、厚生労働大臣折衝の結果、2026年度診療報酬の本体改定率はプラス3.09%と決まった。このプラス幅は30年ぶりのこととなる。10年度でプラス1.55%、12年度でプラス1.379%、その後もプラス0.41-0.88%で推移していたことを考えると、今回の改定は確かに「大盤振る舞い」のように見える。
ただ、医療機関経営の現状を考え合わせると、決して楽観はできない。これによって全ての医療機関が黒字に転換するとは考えにくく、政府、財務省はもとより、厚労省もその意図は持ち合わせていないにちがいない。
今回の改定は「賃金引上げ」と「物価への対応」がそれぞれ柱として立てられている。これ自体が目新しく、あくまで支出増に頭を抱える病院への手当てが主題という意図がうかがえる。医療提供に当たってお金をかけている急性期病院に対応したということだ。
“通常の”改定については年明けの中央社会保険医療協議会の議論が待たれるが、これまでの議論を見ても、医療の高度化や地域の高度急性期・救急医療へのテコ入れを軸とすることが確実だ。全ての診療に対してまんべんなく点数を配分することはないだろう。
財政制度等審議会の財政制度分科会がまとめた「秋の建議」で、「メリハリある診療報酬の配分」の必要性を強調している。厚労省も診療報酬改定と医療政策の連動を明確にうたっている。純粋な意味での「診療」に対する報酬ではなく、あくまで「医療需要を踏まえた政策に沿って提供された診療」に対する報酬なのだ。
医療機関に求められる医療を提供していなければ、改定率並みの増収は難しい。ここでいう「求められる医療」とは、地域で需要が高い医療と、地域に必要な医療を見据えて立案された政策が求める医療の2つを指す。医療機関には、「目の前の患者さん」は言うまでもないが、「求められる医療を実現するための経営」にも向き合うことが求められている。
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