【コウダイケアサービス 毎田糸美代表取締役社長(日本在宅介護協会理事)】
当社が手掛ける訪問介護サービスの一番の課題は、やはり人材確保です。施設系サービスは、職員が場所を移動することが在宅介護ほど多くないこともあり、若い担い手が集まりやすい傾向にあります。一方、在宅介護では夏は猛暑の中、ホームホームヘルパーが自転車などで移動して1日に7、8件訪問することも珍しくありません。さらに、訪問先でエアコンが効いていないケースもあります。訪問入浴でも、ホームヘルパーは汗だくになりながら利用者の入浴を補助しています。
人材を確保するため、国は訪問介護の基本報酬を引き上げ、その財源を使って事業所は職員のさらなる処遇改善を進める必要があります。ただ、それが実現したとしても、訪問介護の現場で働きたいと若い人に思ってもらえるかどうか、正直分かりません。
「最期は自宅で」というのが多くの高齢者の本心だと思いますので、在宅介護を継続して提供しなくてはなりません。しかし、人材不足の状況が今後も続けば、10年後には日本で訪問介護というサービス自体がなくなるのではないかと、強い危機感を抱いています。
ただ、少し光明が差しているように感じます。それは、外国人による訪問介護の解禁です。国は技能実習や特定技能の枠組みで働く外国人が介護保険の訪問系サービスに従事することを2025年4月から認めています。これは訪問介護業界にとって非常に画期的なことです。
この制度を活用し、インドネシアやタイなどから人材を受け入れて訪問介護の現場で働く外国人が増えれば、人材不足が少しは解消されるかもしれません。当社では、6月からインドネシア人の技能実習生を受け入れ、実際に訪問介護の現場に出てもらっています。とても頑張っていて、高評価です。
また、当社には日本語教師の国家資格保を持った介護福祉士がいるので、その職員に海外からの技能実習生などの日本語教育をきちんとしてもらい、将来的には訪問介護の現場で外国人材がどんどん働いてくれるようにしたい。打開策は外国人材の積極的な活用だと考えているのです。
■「3職種兼務規制の緩和」など主張へ
介護事業所の管理者は、管理業務に支障がなければ兼務が認められていますが、「管理者」「サービス提供責任者」「ホームヘルパー」の3職種を1人の人間が同時に兼務することは原則としてできません。しかし、これだけ介護人材不足が叫ばれる中では、人員配置基準のさらなる緩和が求められています。ホームヘルパーが足りなくて管理者が現場に出る機会も今後増えてくるでしょうから、国には一定の条件付きで3職種兼務の規制を緩和してほしいです。
ほかにも経営面での問題として、ホームヘルパーの訪問先への移動にかかる費用や時間に対して報酬上の評価がないことが挙げられます。ホームヘルパー1人が1日に7、8件移動すれば結構な費用負担となるので、地方や都市部にかかわらずホームヘルパーの移動に関する財政支援を検討してほしいです。また、土日祝日の割り増し賃金の費用は現在、事業所の持ち出しになっているので、それへの財政支援も併せてお願いしたいです。
また、急病人に対して医師が緊急往診などで使用している車両は、公共性が極めて高く緊急に広域かつ不特定な場所に対応することが必要な用務と見なされ、公安委員会から交付された「駐車禁止除外指定標章」を車内に掲示することで駐車禁止規制から除外されます。地域の医師会が標章を代行して申請しているケースが多いようです。
一方、訪問介護で使用している車両については、管轄の警察署長にあらかじめ個別の日時・場所を指定して申請し、「駐車許可」を得る必要があります。事業所ごとに申請手続きをしなければならず、とても煩雑な業務が発生します。当社が手掛ける定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスでも、夜中に利用者から急に連絡が来たら居宅を訪問しなければなりません。わたしたちも公的な介護保険という枠組みの中で仕事をしているのに、緊急往診と取り扱いに差があるのはおかしいと考えています。【聞き手/構成・松村秀士】
【取材を終えて】
コウダイケアサービスは、介護保険制度が始まる5年前の1995年11月に神戸市で設立された。当時は、国が示した「高齢者保健福祉推進10カ年戦略」(通称ゴールドプラン)の真っ只中。毎田氏は「事業計画を入念に立てたりせず、それほど深く考えずに起業した」と話す。会社を立ち上げてから30年余り。介護や看護にも多様性が求められる時代となり、「われわれにできることは何か」「今の時代には何が必要か」を常に考えながら、毎田氏は奮闘してきた。
同社はこれからも、時代のニーズに合わせて医療と介護の連携や認知症予防、介護テクノロジーの積極活用にも取り組んでいく意向だ。「在宅から施設まで切れ目なく介護サービスを提供できる会社でありたい」。毎田氏のこの考えは起業したころから一貫して変わらない。
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