厚生労働省は11月2日、全国の病院や診療所などの経営状況を調べた「医療経済実態調査」の結果を、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=森田朗・東大大学院教授)の総会に報告した。それによると、2010年度の一般病院(介護収益2%未満)全体の一施設当たりの損益率は0.1%の赤字で、09年度の2.5%の赤字から大きく改善された。10年度診療報酬改定が、10年ぶりに全体でのプラス改定だった影響とみられる。
医療経済実態調査は、2年に1度の診療報酬改定の前年6月に実施され、報酬改定の基礎資料になる。
今回は、今年6月の単月調査に加え、09、10年度の通年調査を実施。改定前後の2年度分のデータを初めて調べた。無作為に抽出した全国の医療機関のうち、一般病院1204施設、精神科病院197施設、一般診療所1450施設、歯科診療所603施設、保険薬局886施設が回答した。
今年6月の調査は、東日本大震災の影響が大きいと考えられるため、厚労省は通年調査を重視する。
一般病院の損益率を開設主体別に見ると、赤字は「公立」だけだった。ただ、赤字幅は10.0%で、09年度の13.1%の赤字から縮小した。
一方、09年度に0.3%の赤字だった、公益法人や社会医療法人などの「その他」は1.8%の黒字、1.3%の赤字だった「社会保険関係法人」は0.5%の黒字に転じた。09年度に黒字だった「医療法人」「国立」「公的」「個人」はいずれも黒字幅が拡大した=表=。
病床規模別に見ても、いずれも損益率が改善された。最も高いのは「20‐49床」の1.7%の黒字(09年度0.6%の赤字)。このほか「50‐99床」が0.9%の黒字(0.4%の赤字)、「100‐199床」が0.3%の黒字(1.5%の赤字)、「200‐299床」が0.1%の黒字(1.9%の赤字)、「300‐499床」が0.4%の赤字(3.1%の赤字)、「500床以上」が0.6%の赤字(3.2%の赤字)だった。
診療報酬の改定率は、予算編成の過程で内閣が決めるが、中医協としての意見を厚労相に進言できることになっている。森田会長は2日の中医協総会で、「今後は、この医療経済実態調査などを踏まえつつ、(12年度報酬改定に向けて)議論を進めていくことにしたい」と述べた。
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