【株式会社MMオフィス代表取締役 工藤高】
■ケースミックス無視の在院日数短縮は限界ではないか
これまで在院日数短縮の議論は、社会保障・税一体改革において「医療資源の投入強化等による機能強化、医療機関間や医療と介護の連携の強化等により、平均在院日数の短縮」を図ることがうたわれ、社会保障制度改革国民会議においても所要額(公費)が4400億円程度削減できるとされてきた。その一方で、現場からはこれ以上在院日数は短縮できないとも言われ、「診療報酬で機能分化を進めるのがあまりに性急で、地域の医療が崩壊してしまう」「平均在院日数を短縮する努力は惜しまないが、特定除外患者のような制度上行き場のない患者の受け入れ負担は医療機関個別の問題ではないはず」「在院日数を短縮した結果、ベッドが空いてしまい経営が成り立たない」といった悲鳴や嘆きの声を聞く。
確かに在院日数の評価方法が現状の計算式であれば、これ以上の短縮は限界だろう。平均在院日数は「3か月間の延べ入院患者数/3か月間の(新入院患者数+退院患者数)÷2」で計算される。この式は病院におけるケースミックス(患者構成)を完全に無視している。分母の入退院患者数が多くなれば、平均在院日数は減少する。そのため分母に短期入院患者が多ければ、分子に多少の長期入院患者がいても短くなる。小児科、マイナー診療科や内視鏡手術、心カテ検査などの在院日数が短い入院が多い病院が該当する。これらの病院では、呼吸器内科病棟に高齢者の長期入院患者がいても病院全体の平均在院日数は短くなる。一方、短期入院がもともと少ない脳外科や血液内科、がん専門病院における平均在院日数は長めの傾向になる。その不公平是正のために2014年度診療報酬改定で短期滞在手術等基本料3として白内障、そけいヘルニア等の短期入院が平均在院日数算定式から除外された。この議論は7対1における「在宅復帰率75%以上」も同様だ。これも小児科、マイナー診療科、心カテ検査入院などの短期入院が多ければ、当然のごとく在宅復帰率は高くなるからだ。
■在院日数短縮には4つの指標を考慮しないといけない
現状の平均在院日数算定式で限界点を超えるには、以下の4つの指標がカギになる。それぞれが在院日数にどのような影響を与えるか、データから考えてみたい。
① ケースミックス(患者構成)
② 年齢
③ ADL(日常生活動作)
④ 認知症
次回配信は4月1日5:00を予定しています
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