2016年度の診療報酬改定から2カ月近くが過ぎた。今回の改定では、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)が大幅に見直され、7対1入院基本料の届け出医療機関は岐路に立っている。看護必要度の改変は、医療現場にどのような影響を与えたのか―。看護必要度に詳しい有識者へのインタビューや、実際の病院の事例を交えながら、制度の見直しの意味を考えたい。【敦賀陽平】
また、ICU(特定集中治療室)に関しては、A項目の「心電図モニターの管理」「輸液ポンプの管理」「シリンジポンプの管理」の配点を1点に据え置く一方、それ以外の項目を2点に引き上げた。これに伴い、患者割合の基準も見直され、1点の項目だけを満たしても、A項目の基準をクリアできなくなった。
さらにB項目の評価票については、評価項目と配点を一般病棟、ICU、HCU(ハイケアユニット)で統一 =表、クリックで拡大=。 また一部の項目が簡素化され、「起き上がり」と「座位保持」が削除される一方、認知症やせん妄の患者の指標となる「危険行動」と「診療・療養上の指示が通じる」が追加された。
■看護職員以外の記録も評価対象に
今回の最大の変更点が、一般病棟用の評価票に手術後の患者の状態などを評価する「C項目」が新設されたことだ。
具体的には、▽開頭手術(7日間)▽開胸手術(同)▽開腹手術(5日間)▽骨の手術(同)▽胸腔鏡・腹腔鏡手術(3日間)▽全身・脊椎麻酔の手術(2日間)▽救命等に係る内科的治療(同)―の7項目で、内科的治療は「経皮的血管内治療」「経皮的心筋焼灼術等の治療」「侵襲的な消化器治療」の3区分となっている =表、クリックで拡大= 。
こうした項目の見直しに伴い、看護必要度の基準も大きく変わった。一般病棟では改定前、「A項目2点以上かつB項目3点以上」の患者を「重症者」と定めていたが、これに「A項目3点以上」と「C項目1点以上」が新たに加わった。また基準が増えたことで、これを満たす患者割合の要件は厳格化され、7対1病棟に占める重症者の割合は「15%以上」から「25%以上」に引き上げとなった =表、クリックで拡大= 。
このほか、看護必要度の評価者の対象も見直された。改定前は、看護職員が記録した場合に限り、診療報酬の評価対象となっていたが、一部の項目については、院内で研修を受けていれば、医師や薬剤師、理学療法士ら他職種も評価者となることが認められた。
●B項目の評価票の統一がポイント!―都看協・嶋森会長に聞く
看護必要度創設時の調査にも携わり、昨年夏まで中央社会保険医療協議会(中医協)の「入院医療等の調査・評価分科会」の委員も務めた東京都看護協会の嶋森好子会長に、今回の見直しの評価を聞いた。【聞き手・構成=敦賀陽平】
看護師の業務は、「診療の補助」と「療養上の世話」があり、A項目は診療の補助、まさに医療の部分を評価してきました。しかし、中医協の分科会では、「なぜ看護必要度で入院医療を評価するのか」といった指摘もありました。医療現場では見かけ上、看護師の数と看護ケアの手厚さで報酬が決まっているので、そうした意見が出たのだと思います。
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