在宅療養を支える医療と介護の連携を、全8種類の事業で進める「在宅医療・介護連携推進事業」(推進事業)。全国の市町村と特別区が、遅くとも2018年度から実施することになっているが、まだ手を付けていない自治体もあり、連携推進の成果は見えづらい。そんな中で、既に8事業に取り組んでいる東京都北区に注目すると、区外の病院に入院した患者を在宅療養へ円滑に移行させる効果などが見えてきた。【佐藤貴彦】
推進事業は、昨年4月の介護保険法改正で、認知症総合支援事業などとともに地域支援事業の一部となった。この制度改革は、団塊世代が75歳以上となる25年までに、地域包括ケアシステムを実現させるためのものだ。
来年度末まで経過措置が設けられているが、市町村などは推進事業を構成する8事業 =図、クリックで拡大= すべてを実施する必要がある。
ただ、これから1年半で全国1741自治体がすべて実施できるかは不透明な状況だ。というのも、厚生労働省の今年度の調査(速報、8月1日時点)で、98自治体(5.6%)が1つも実施しておらず、年度内に実施する予定もないことが分かった。年度内にいずれかの事業を実施する予定の77自治体(4.4%)と合わせると、すべて未実施の自治体が1割に上る =グラフ1= 。
8事業を個別に見ると、6割超の自治体が既に実施しているものがある。一方で、「切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進」「在宅医療・介護連携に関する相談支援」を実施している自治体は、それぞれ4割を下回る =グラフ2= 。
2事業はいずれも、医療関係者らの協力が特に求められる。このため厚労省は、医療計画を策定する都道府県に推進事業を後押しさせる方針を固めた。現在、関係する審議会などで、そうした方向性を提案しており、実現すれば多くの自治体で推進事業が前に進むかもしれない。
■高齢者アンケートで在宅の需要が明確に
ただ、こんな疑問も残る。推進事業に取り組んだとして、在宅医療・介護の提供体制を強固にする効果があるのだろうか-。8事業に取り組む北区にスポットを当て、小宮山恵美・介護医療連携推進担当課長の話を聞いた。
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