【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
4月1日、多くの介護事業者で新入社員の入社式が行われた。式には、新社会人としてスタートを切った今春の学卒者も数多くいたと思う。私が介護福祉士養成校で教えた卒業生も希望を胸にして入社式に臨み、介護福祉士として利用者に向き合いながら仕事を覚えている最中である。教師の1人として願うのは、彼らの夢や希望が叶えられることだ。くれぐれも介護事業者自身が新人職員の夢や希望を砕くことがないよう祈りたい。
だが、実際には、若者たちの夢と希望を粉々に砕くことが教育だと勘違いしている介護事業者が存在する。勘違いの教育とは、「理想と現実は異なる」と言いながら、理想がない自らの程度の低い介護サービスをスタンダードだと教えることだ。それは、傍から見ると根拠に基づかない貧困な介護実践を強制しているようだ。勘違いの教育に直面した若者たちは、「介護職は人の役に立つ職業だと思っていたのに違った」と短期間で退職し、他産業へ転職してしまう。そのようにして介護実践の場を去る人の中には、利用者を物のように扱う機械的・作業的な介護実践の現状に幻滅し、高齢者を幼児扱いして尊厳を奪うようなやり方がトラウマとなり、二度と介護現場に戻れなくなる人もいる。
介護人材不足と言われる中で、そのような理由で介護実践の場から去る若者が存在する現状は、介護事業者自らが介護人材を削っているようなものだ。この状況が今後も続くのなら介護人材は永遠に充足しないし、この国全体の介護の質も向上しないだろう。そうならない介護、そうしない介護のサービスを、新人職員が入職後の教育を受け、仕事を覚え始めているこの時期に事業者は改めて考えてほしい。
■使命感と誇りを感じられる職場に
仕事を長く続けるには、その仕事に誇りを持つことが重要な要素になる。介護という職業は人の暮らしを支え、豊かにするための職業であり、その使命や役割を果たすことで自ずと誇りを持つことができる。その使命をなくすもの、その誇りを奪うものとは何かを真剣に考えてほしい。そして介護という職業の使命を果たし、誇りを感じられる職場づくりをしてほしいと切に願う。
せっかく就職したのに短期間で退職に至る人の最大の理由は、
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