国立がん研究センターは、肺がんの脳転移に関与する遺伝子変化を特定したことを明らかにした。肺がん患者の脳転移の予測や治療法の開発に役立つことが期待されるとしている。
同センター研究所ゲノム生物学研究分野の白石航也ユニット長、河野隆志分野長らの研究グループは、同センター中央病院で切除された約1,100例の肺がん組織を用い、DNAとRNAの変化を調べた。その結果、外科的切除後に脳転移を起こした患者では、起こさなかった患者と比べて、15番染色体長腕の一部「15q15領域」の欠失が多く生じていることが分かった。
欠失領域にはMYCシグナルを抑制する働きを持つ遺伝子「MGA」が含まれていた。「15q15」欠失を持つ肺がんは、外科的切除後の脳転移の発生率が持たない肺がんよりも3.9倍高かった。また、肺がんの原発腫瘍と脳転移の両方を発症している患者15人を解析したところ、約半数で原発腫瘍では顕著でなかった「15q15」欠失が脳転移で検出された。
これらの結果から、国がんは「15q15欠失は肺がんの脳転移を起こしやすくする遺伝子の変化であると考えられる」としている。研究成果は、11月7日付の国際学術誌「Journal of Thoracic Oncology」に掲載された。
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