24時間365日、止まらない「情報インフラ」を支えるマネジメント
急性期病院のシステム担当者が語る PR

心臓血管領域を中核とする急性期病院の医療法人社団誠馨会新東京病院(千葉県松戸市)は今般、情報インフラ基盤を全面刷新し、それまで部門ごとに構築されていたものを一元化しました。刷新を主導した同院システム課の臼井貴志課長補佐に、急性期病院におけるネットワーク基盤のマネジメントについて、考え方や進め方をうかがいました。
(アライドテレシス株式会社 制作:CBnews編集部)
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急性期病院で不可欠な
「止めない情報インフラ」
医療のデジタル化が進むなか、情報システムとネットワークは、診療の継続性から地域連携の成否までを左右する基盤となりました。一方で、その整備や投資は「見えにくい」がゆえに後回しにされやすいのも実情です。
病院内では、電子カルテやCT・MRIは臨床に直結する「見えるインフラ」として注目されがちです。しかし、ネットワークやそこで発生するデータ通信は、普段は現場で目にすることのない「見えにくいインフラ」で、かつ水道や電気網、ガス栓と同様、「あって当たり前」のものとして、24時間365日、途切れることなく稼働し続けていると、臼井氏は指摘します。重要性の割に意識されにくいものですが、だからこそ、「止めてはいけない」と力説します。
特に24時間稼働する急性期病院では、医療機器の大半がネットワークに接続された状態で動き、部門システムも多岐にわたるだけに、常時稼働が必須です。臼井氏が刷新にあたってまず据えたのは、利便性が高まるほど通信途絶時のリスクも高まるという点でした。「医療機器も部門システムも、今やネットワークにつながって動くのが当たり前。ネットワークが止まれば、診療そのものに支障が出るということです。」
特に大規模災害など非常時の継続性を重視します。停電時の電源を発電機で確保するのと同じ発想で、ネットワークも「止めない」ことを前提に設計したのです。電源だけを守ってもネットワークが落ちれば診療は止まるという危機意識があります。「災害時こそ止めてはならないのが病院です。電源は発電機で72時間を確保していますが、ネットワークを含むITインフラも同じ。『止めない』を担保する構造を追求しています」
少人数で常時の管理体制を維持
クラウドサービスの活用にも対応
ネットワークを管理、運営する人員体制も課題です。診療報酬で収入が定まる構造上、人件費の配分は医療職に傾きやすく、ネットワーク専従の人材を厚く抱えることは難しいのが現実です。同院では、定員5名のシステム課で、本院の24時間稼働と駅前クリニックの運用を支えています。だからこそ臼井氏は、少人数でも運用が回る仕組みを基盤側に組み込むことを刷新の要件とし、その要請に応えられるアライドテレシスを採用しています。
一例として、刷新を機に整備した24時間365日の監視体制を挙げることができます。旧来のベンダーは平日日中の対応が中心だったため、夜間・休日は障害が起きても朝まで発覚せず、初動対応が遅れることもありました。そこで新システムでは、アライドテレシスが提供している監視基盤(VST-APLシリーズ、Net.Monitor)を導入して常時、状態を監視し、かつ機器障害に備えて予備機をあらかじめ用意して自動復旧につなげる仕組み(AMF)も整えました。
また同院は電子カルテなど医療系のネットワークとインターネットにつながる情報系の経路を、もともとは分離して構築してきましたが、この見直しも実施しています。なおWi-Fi環境については、この見直しで、それまで物理的に分離していた情報系と電子カルテ系を統合し、1台の無線LANアクセスポイントで併用できる構成にしました。
なお、大規模災害発生時を念頭に、ロビーや救急外来周辺、食堂などにもアクセスポイントを増設しWi-Fi提供環境を拡大しています。これにより、災害時にロビーが患者や避難してきた人で混雑するような院内を災害対応の拠点として使う場合に備えています。
本院と駅前クリニックを結ぶ専用線は現在、医療系の通信のみを通していますが、臨床現場で急速に重要性を増しているクラウドサービスへの接続と拠点間の速度確保という要件を両立させる課題に取り組んでいます。
臼井氏はこう語ります。「臨床現場でもクラウドサービスの利用が増え、インターネットに確実につながらなければ診療に支障が出かねない状況になりました。そこで、もともと医療系しか通していなかった拠点間の専用線にインターネット通信も集約し、安全性と速度を両立させることにしたのです。
刷新は年間予算の枠も見据えながら3期に分けて段階的に進めました。製品とベンダーの選定では、グループ内の先行事例が判断を支えたといいます。「お付き合いのないベンダーに基幹システムを任せるのは、やはり不安が残ります。今回はグループの総泉病院や千葉メディカルセンターが先行して刷新しており、アライドテレシスの実績と評判を確認できたこと、これが決め手でした」
現場・ベンダーに丸投げせず
病院主導の運営・管理を実践
情報インフラのガバナンスをどこに置くか。これは技術論ではなく、組織の問題として捉えるべきだというのが、臼井氏の考えです。かつて同院でも、放射線や検体検査など部門ごとにシステムを個別構築・個別管理していた時期がありましたが、ランサムウエアなどの脅威が現実味を増す中、一元管理は危機管理の点からも必須でした。そこで更新のたびに必ずシステム課が関与し、サーバー管理と仕様の決定を集約していったそうです。
ただし、一元管理は現場の締め付けではないことも、臼井氏は念押しします。現場の要望を否定せず、仮想化やサーバーの置き場所をシステム課から提案できる関係を築くことに心を砕きます。通常の運営に関わる管理は院内で担い、新たな拠点や大幅な構成変更ではベンダーの専門性を使うなど、丸投げではなく院内に管理主体を置くことが、少人数運用の現実解だといいます。安全を担保する工夫も、ルールの押し付けではなく仕組みで実装することを心がけています。
「何も起きない」が成果
長期的視野の投資を訴える
効果が数値で見えにくいインフラ投資の重要性を、経営層に理解してもらうことも重要なテーマです。ネットワークやセキュリティーは「何も起きないこと」が成果で、収益にも直結しないため、経営層の理解を得るのも簡単ではないといいます。
「高額医療機器を購入したほうが目の前の患者を助けられるし、医療の質は向上すると、医療者は考えがちです。もちろんそうした考え方は大事ですが、一方で病院の10年先、20年先の長期的な視点に立って、インフラやセキュリティーに対する投資も不可欠です」
標準型電子カルテや国レベルの医療情報基盤をめぐる議論が進むなか、臼井氏は、院内で完結するネットワーク運用は転換期を迎えていると感じています。
「これからの医療は院内で完結することはありません。紹介や逆紹介で患者情報をやり取りする以上、地域全体を見据えた基盤とセキュリティーが欠かせません」と、臼井氏は語ります。不正アクセスや情報漏えいを防ぐ機能を備えたセキュアブラウザーを導入し、退院・転院支援や逆紹介などの後方連携の業務から活用を始めました。
連携が広がるほど、外部との接続点はリスクに直結します。たとえばベンダーによる保守回線の開設にあたっても、接続ルートは自院で用意し、ベンダーごとにアカウントを払い出して一元的に管理するなど、備えに万全を期しています。
医療提供が院内の枠を越えて地域に広がる中で、それを支える「見えないインフラ」を、どう構築、運営していくか。この命題に、医療を「止めない」体制の成否がかかっているとさえ言えそうです。
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