増加に歯止めがかからない高齢者の救急搬送。受け入れ側の医師や看護師らの疲弊が甚だしく、「これ以上増えたら、もう支えきれない」と悲鳴に近い声が上がる。すぐに手を打たなければ、医療体制が崩壊してしまう―。危機感を持った救急医と地域の医療関係者らがスクラムを組み、病院救急車の利用や搬送データの解析といったハード・ソフトを活用した対応策を検討するなど、難局の打開に向けた動きが活発化している。【新井哉】
「高齢者の救急患者を地域の医療機関で受け入れる医療提供体制が求められている。慢性期の医療機関も積極的にその役割を果たすべきだろう」。医療法人社団永生会の安藤高朗理事長は、こう強調する。東京都八王子市を中心に病院や診療所、訪問看護ステーションなどを展開する永生会が最も力を入れているのが、急性期と慢性期の医療機関による「急慢連携活動」だ。
救急患者における「入口問題」と「出口問題」は、医療関係者の頭を悩ます“至上命題”で、急増中の高齢患者の受け入れをめぐっては、地域ごとに試行錯誤を続けているのが実情だ。永生会の永生病院が所在する八王子市では3年前、同市や八王子市医師会、消防署などの協力のもとで、救命救急センターや大学病院、医療療養病床を持つ医療機関が「八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会(八高連)」を設立。地域の医療機関がスクラムを組み、高齢救急患者の広域医療体制の構築に向けて活動を続けている。
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