【日本医業経営コンサルタント協会福井県支部 支部長 杉原博司】
地域包括ケア病棟は今後不足する回復期を担う病棟として、2014年度診療報酬改定で誕生しました。それから3年弱を経た現在、導入の試みにも多様な形が現れてきています。
前回は「視点①:急性期病床の一部を地域包括ケア病棟に転換する」ケースを取り上げましたが、今回は「視点②:地域包括ケア病棟を病院の主力として運用する」ケースを検証します。
16年度改定において、地域包括ケア病棟の手術・麻酔が出来高算定となったことで、DPC/PDPSにおける包括内容と地域包括ケア病棟入院料における包括内容は、リハビリを除けば、ほぼ同じとなりました。これにより、急性期病棟と地域包括ケア病棟の在り方が大きく変わってきました。急性期病棟で行っている医療内容によっては、「これからは地域包括ケア病棟を当院の主力病棟に」と考える病院さんも出てきているようです。
厚生労働省の調査によると、地域包括ケア病棟の入院患者は、以前の亜急性期病床で多かった骨折や脳梗塞などに加え、肺炎、悪性腫瘍、尿路感染症など内科系疾患が増えているようです。回復期リハビリ病棟を併設しない病院では、こうした患者傾向がより出やすいと思われます。
回リハ病棟は、脳血管疾患リハの実施割合が少ないと、入院単価が低くなる傾向にあり、中小病院で脳外科をあまり得意としない場合にはメリットが少ないと考えられます。一方、地域包括ケア病棟は多様な疾患を受け入れられるので、急性期病床を持つ中小病院で、後方病院がないなどの地域的事情、さらに1日平均入院単価が3万円を切るような状況であれば、回リハ病棟を併設するよりも、地域包括ケア病棟で多様な疾患を受け入れる体制を目指す方が、経営上のメリットがあると考えられます。いっそ急性期病床をすべて地域包括ケア病棟に変えるという大胆なやり方も選択肢の一つです。1日平均入院単価が3万円を割る病院の場合は今後、自院が担う医療は急性期から慢性期医療が主体となることも考え、地域包括ケア病棟入院料で収入を確保するという選択もあってしかるべきだと感じています。
■地域包括ケア病棟を病院の主力病棟とするには
地域包括ケア病棟入院料は対象疾患を選ばず、使い勝手の良い特定入院料です。急性期病床から転換して運用すれば、
▽看護職員の夜勤72時間ルールに縛られない
▽平均在院日数に縛られない
▽安定した包括入院料が得られる
―などのメリットが魅力です。加えて手術・麻酔が出来高算定になったことで、「思い切って急性期病床を全転換して、地域包括ケア病棟のみで運用する」という選択も可能になったわけですが、これまでの医療行為が維持できるとともに、収入を確保できなければなりません。この選択をする上での検証ポイントを確認しましょう。
次回配信は2月8日5:00を予定しています
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