【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
救急救命士は、1991年に救急現場及び搬送途上における応急処置の充実と救命率の向上を図るために創設された国家資格である。救急救命士は、吐血処置や脈拍測定、薬剤投与、気管挿管など実施できる救急救命処置が33項目あり、救急医療において活躍し得るスペシャリストであり、救急科医師からのタスク・シフトの担い手として注目されている。
従来は、救急現場及び搬送途上に業務が限定されていたが、2021年に救急救命士法が改正され、病院内で搬送患者が入院するまでの間についても救急救命処置を実施することが可能となった。病院内の救急外来に活動範囲が拡大されたことに伴い、病院での救急救命士の採用も活発化している。ただし、入院後の病棟内で患者が急変した場合であっても特定行為などは現在のところ行えないので、その点は留意しなければならない。 (残り1582字 / 全2557字) 次回配信は5月12日を予定しています
年間約3,000人が救急救命士として登録されており、25年1月末時点で7万5,915人となっている=資料=。
救急救命士の就職先は、消防本部が66%、看護師などとのダブルライセンスが16%、自衛隊・海上保安庁が2%、国家資格を有しているものの有効活用できていない潜在救急救命士が16%の9,000人程度いるという。ここで、潜在救急救命士とは、消防機関に就職ができなかった人、消防機関を定年退職した人、出産・育児を機に消防機関を退職した女性救急救命士などを意味する(=救急医療体制の推進に関する研究 2016・17・18年度 総合研究報告書、研究代表者 山本 保博より=)なお、救急救命士全体のうち女性が16%であり、男性が多い職場である。
病院の救急外来には、看護師を配置してトリアージや医師が行う処置などをサポートすることが多い。専門性の高い看護師を救急外来に配置することは、入院率の高い救急車搬送などでは病棟へのつなぎ役としても非常に有効な手段だ。しかしながら、病院から看護師離れが進む今日、人材確保が困難になりつつある。特に病棟では7対1の看護師配置基準を満たすために、できるだけ看護師を病棟に配置したいはずだ。さらに、夜勤の看護師が不足する中で、金額的にも看護師の負担軽減という意味でも看護職員夜間配置加算の届け出はぜひとも実現したいものだ。となると、
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