中央社会保険医療協議会(中医協)の「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直己・慶大医学部教授)は7月29日の会合で、報告書案を大筋で了承した。一般病棟に90日を超えて入院する「特定患者」と、医療療養病棟の入院患者では、疾患構成に大きな差がなかったとする「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査」の分析結果などを、前回会合に厚生労働省側が示した素案に追記した。
「慢性期入院医療の実態」では、一般病棟と医療療養病棟の入院患者の疾患構成の比較を素案に追記した。それによると、医療療養病棟に比べ、一般病棟では「骨折」や「悪性腫瘍」、「肺炎」の割合が高いが、特定患者に限ると「脳血管疾患」や「まひ・廃用症候群」の割合が増え、医療療養病棟に近い傾向になった。
特定患者は、一般病棟入院基本料に比べて点数が低い「特定入院基本料(包括点数)」の算定対象になるが、人工呼吸器装着など12の「特定除外項目」のいずれかに該当すれば、入院が90日を超えても一般病棟入院基本料を算定できる。
報告書案では、診療報酬明細書(レセプト)を基に分析したところ、特定患者のほとんどが特定除外項目に該当すると指摘している。
■コスト調査は参考程度に
また報告書案では、「昨年度診療報酬改定の影響」について、コスト調査の結果を素案に追記した。この調査では、医療療養病棟がある病院の2009年6月と昨年6月の収支状況を比べるため、1097病院に調査票を送付し、358病院から有効回答を得た。
調査結果によると、昨年6月の1施設当たりの収支差額は466万円で、09年6月から177万円改善。また、すべての病床が医療療養病床で、09年6月と昨年6月で病床数に変化がなかった病院の収支差額を見ても、看護配置20対1病棟がある病院(7病院)、25対1病棟がある病院(16病院)とも改善していた。
ただ、委員からは、▽入院患者の医療区分が分からない▽回答した病院数が少ない▽レセプトを基に医療機関の収入を調べた「レセプト調査」では、08年度と昨年度の結果を比べると、看護配置20対1病棟は収入が増えた一方、25対1病棟では減っていた―ことなどを理由に、コスト調査の信頼性を疑問視する意見が相次いだ。池上分科会長は「あまり重きを置く結果ではない」と述べ、参考程度にとどめるべきだとの認識を示した。
■横断調査の継続的な実施を提言
会合ではこのほか、▽「横断調査」を今後も継続して実施する▽医療機関に負担を掛けずに患者の実態を把握するため、電子レセプトデータの活用を進める―ことを中医協総会に提言すべきだとの意見があり、了承された。
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