【ネットワーク・情報セキュリティーコンサルタント 小椋正道】
連載ではこれまで、「院内」における情報セキュリティーについて説明してきましたが、「院外」では、どのような点に注意すればいいのでしょうか。今回は在宅医療・介護におけるIT化の基本について取り上げます。
以前、滋賀県の医療情報連携ネットワークシステム「びわ湖メディカルネット」の構築に携わった経験があります。その際、「在宅の現場で、じっくり端末に向き合って作業する余裕はない」「ちょっとした記録を残すにも、いったん紙にメモして、事務所に戻ってから端末に入力している」といった話を耳にしました。また、実際の在宅医療・介護の従事者のITスキルには、大きなバラつきがありました。過去に私がお会いした方々の印象では、どちらかというと得意ではないとおっしゃる方が多かったようです。
現場で仕事をする人にとって、無理なく使えるインターフェースでなければ、せっかくのIT化も意味をなしません。データを入力するにも簡単に素早く行えることが、在宅におけるIT活用では、特に重要な要素になります。
診察室で座って電子カルテ端末を操作するのと違い、在宅では、常に動き回る状況で端末を使うことになるので、「重くてかさばるノートパソコンを現場で起動して、エクセルを立ち上げ、各種データを入力する」といった作業は、現実的ではありません。キーボードを打った後にトラックパッドを使ってクリックして…では、操作性の点からも本来業務に差し障ります。かといって、iPod touchのような小型デバイスやスマートフォンは、人によっては「画面が小さすぎて使いにくい」ということも十分に考えられます。
上記の例は「帯に短し、たすきに長し」ですが、これらの条件をクリアするデバイスはタブレット端末でしょう。場所を取らず、持ち歩くのも苦にならないサイズ、操作は簡便で起動も速いですから、在宅の現場でも抵抗なく使えます。
■おすすめはセルラータイプのタブレット
タブレットを含むモバイル機器の利点は「どこでも使える」という点です。ただし、「セルラータイプのタブレットは割高だし、電話会社への基本料金も発生するから、Wi-Fiタイプでいいよね」と安易に考えていませんか?
確かにランニングコストが安いことは重要なポイントです。しかし、使いたい場所で使えないとなると、大きな機会損失につながります。移動中に通信できることによって、患者さん・利用者さんの容態変化にも素早く対応できます。「ほぼどこでもつながる」セルラータイプの安心感は大きいと思います。この点からも、Wi-Fiのみ対応タイプではなく、セルラータイプのタブレットがお勧めですが、セルラータイプにはもう一つ、リスク管理上のメリットがあります。
次回配信は3月7日5:00を予定しています
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