中央社会保険医療協議会(中医協)の「診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会」(分科会長=田中滋・慶大大学院経営管理研究科教授)は1月21日、急性期病院が算定する入院基本料に含まれるコストや、医療現場で発生する実際のコストを分析できるかどうかの検討に入った。分科会の下に、公認会計士らによるワーキンググループ(WG)を設置。WGでは、そもそも分析を実施できるかや、実施できるとすればどのような形になるかなどを3月にかけて話し合う。
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これまでの中医協・総会の議論で診療側は、病院などが算定する入院基本料の中に、建物や設備などのコスト(ホスピタルフィー)がどれだけ含まれているのかなどを明確にすべきだと主張しており、こうした分析の実現性についてコスト分科会から意見を聴くことになっていた。これを受けて分科会では、公認会計士らのWGで実現できるかを検討することにした。
WGは年度内に結論を出し、田中分科会長が中医協・総会に報告。コスト分析を実施するかどうかの判断は総会が下す。厚生労働省は、「年度末か年度明け」には決着を付けたい考えだ。
厚労省は21日の分科会に、コスト分析を行う場合の前提条件として、同分科会による現行の「部門別収支に関する調査」の枠組みを活用する案を提示。ただ、同調査では、DPC対象病院のデータしかないため、コスト分析の対象を急性期に限定する方向も示した。
医師や看護師など医療スタッフの配置は、入院基本料だけでなく、リハビリテーションなどの「特掲診療料」でも評価されており、人件費をどう切り分けるかが焦点になる。
■小山委員「あるべきコストの分析を」、鈴木課長「マーケットを超える」
21日の分科会では、小山信彌委員(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)が、「各病院は苦労して人件費を削減している。そのたがを外さないと、本当のコストは出てこない」と述べ、実際に掛かったコストでなく、理想の医療の提供に必要なコストの分析を求めた。これに対し、厚労省保険局医療課の鈴木康裕課長は、「あるべきコスト論をやりだすと、マーケットを完全に超えてしまう」と難色を示した。
WGのメンバーは次の通り(敬称略)。
荒井耕(一橋大大学院商学研究科准教授)▽五十嵐邦彦(公認会計士)▽石井孝宜(同)▽松田晋也(産業医科大医学部公衆衛生学教授)▽渡辺明良(聖路加国際病院事業管理部財務経理課マネジャー)
オブザーバー 田中滋(慶大大学院経営管理研究科教授)
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