【日本医業経営コンサルタント協会福井県支部 支部長 杉原博司】
多様化する地域包括ケア病棟は、ケアミックス病院の在り方にも影響を与えています。2016年度診療報酬改定において、基本診療料の施設基準に関して次のような文言が加えられました。
3 特定入院料を算定する病棟及び治療室等のみの保険医療機関又は特定入院料を算定する病棟及び治療室等以外に算定する入院基本料等が特別入院基本料等のみの保険医療機関において、届出及び算定可能な特定入院料は、回復期リハビリテーション病棟入院料1、2及び3、地域包括ケア病棟入院料1及び2(地域包括ケア入院医療管理料を含む。)=中略=に限る。
それまで、すべての病床が特定入院料であることは一部認められていませんでしたが、この文言ができたことで「地域包括ケア病棟のみの病院」「地域包括ケア病棟と回復期病棟の病院」などの存在が可能となりました。この改定を踏まえて「急性期病床+地域包括ケア入院医療管理料+回復期リハビリ病棟」を「地域包括ケア病棟+回リハ病棟」に変更した福井県内の病院さんもあります。これも回復期病床を増やすという地域医療構想と連動した動きなのでしょうか?
ここで、残る最後の視点である 「視点4:療養病床から地域包括ケア病棟に転換する」 に触れます。
地域包括ケア病棟は回リハ病棟と同様に、療養病床からの転換が可能です。しかし、療養病床から地域包括ケア病棟に転換するパターンでは、乗り越えなければならないハードルが高く、そして多い場合があります。地域包括ケア病棟への転換による収入増を安易に求め、強引に転換を推し進めていくと、厳しい状況に陥ることも予想されます。
■地域包括ケア病棟はやはり亜急性期なのか?
療養病棟から見ると、地域包括ケア病棟の看護配置は手厚くなります。基準となる入院患者数を50人として考えた場合、次の表のようになります。
これを見ると、「地域包括ケア病棟は回復期というより、やはり亜急性期なのだ」ということを改めて感じます。もちろん療養病棟といっても、医療療養と介護療養、入院基本料1と2、そして在宅復帰機能強化加算の有無と違いがあり、十把ひとからげには言えないところです。「医療療養病床で療養病棟入院基本料1、しかも在宅復帰機能強化加算を取得できる」という病院の場合には医療密度も濃く、地域包括ケア病棟へ移行しても看護職員が対応できるケースもあるかと思います。
【地域包括ケア病棟への転換が見込める療養病棟像】
1)10対1に近い急性期病棟を併設している
2)療養病棟入院基本料1を算定している
3)在宅復帰機能強化加算を届け出ている
4)リハビリスタッフを確保している
■療養病棟からの転換で運用の課題は?
地域包括ケア病棟の包括範囲と療養病棟は近いのですが、運用面では幾つか検討すべき事項があります。
【運用面の課題】
▽リハビリ料は同じ包括だが、地域包括ケア病棟には1日平均2単位実施の要件がある
▽「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)を導入する必要性があり、看護職員に研修・周知させる必要がある
▽看護必要度のA項目1割を満たす患者として、がん終末期のケアが可能な体制
▽在院日数短縮に向けた取り組み
まずは病室単位から開始して徐々にアップしていくやり方が良いと思われますが、看護職員の増員による人件費を考えると収入面では厳しいかもしれません。転換工程と低めの収入予測を立てた上で慎重に進めていくことをお勧めします。中小病院の場合には、療養病棟を転換するよりも併設する急性期病棟を地域包括ケア病棟へ転換する方が、看護職員の確保が厳しい昨今、無難な選択と言えそうです。
■「地域包括ケア病棟はもうかる」だけでは続かない
これまで4つの視点で地域包括ケア病棟の運用を検証してきました。これを踏まえて次の18年度改定を見据えながら、地域包括ケア病棟の収益と運用、今後の課題と中小病院における地域包括ケア病棟について触れていきます。
次回配信は3月8日5:00を予定しています
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